【社説】米規制当局につぶされたアイロボットPhoto:Joe Raedle/gettyimages

 ロボット掃除機「ルンバ」のメーカーで、創業から35年を経たアイロボットは14日、米連邦破産法第11条(民事再生法に相当)の適用を申請した。訃報には「米政府によって暗殺された」と書かれるかもしれない。エリザベス・ウォーレン上院議員(民主、マサチューセッツ州)に扇動されて仕事熱心になり過ぎた反トラスト法(独占禁止法)の執行者たちが、ナイフを突き刺した。そしてドナルド・トランプ大統領の関税措置が、致命傷になったのかもしれない。

 われわれは2022年当時、ウォーレン氏とバイデン政権内の進歩派勢力が、どのようにしてアマゾン・ドット・コムによるアイロボット買収を阻止したのかについて解説した。彼らは、17億ドル(現在のレートで約2650億円)でのこの買収が成立すれば、ロボット工学製品・家庭用機器分野でのアマゾンの優位性が不当に強化されると主張した。さらに、アマゾンがルンバを手に入れれば、それを使って米国民のデータを収集したり行動を盗み見たりすることが可能になると指摘した。

 ウォーレン氏ら進歩派の人々が22年9月に、バイデン政権下で連邦取引委員会(FTC)委員長を務めていたリナ・カーン氏に送った書簡の内容は次のようなものだった。「(アマゾンは)倉庫事業とフルフィルメント・ロボティクス・スペース(ロボット技術による倉庫内作業の効率化)分野のリーダーだと『ほぼ全世界で認識されている』。(買収が実現すれば)こうした支配力を乱用できる新たな市場がアマゾンに提供されることになる」。それはまるで「神様お願いです。倉庫作業を楽にしたように、家事の負担を減らすためにアマゾンがロボットを活用するのを、どうかやめさせてください」と言っているようなものだ。