厳しい米雇用市場、求職者はどう向き合うかILLUSTRATION: ELENA SCOTTI/WSJ, ISTOCK

 米国の雇用市場に関する「公式の説明」が、ようやく厳しい現実に追いつきつつある。

 求職者たちは以前から、筆者や友人、ペット、あるいは耳を傾けてくれる人なら誰にでも、職を見つけることが見かけ以上に難しいと不満を漏らしてきた。

 普通の人々は、筆者のように米労働統計局(BLS)のウェブサイトで更新ボタンを連打して、雇用に関する新たなデータが発表される瞬間を待ったりはしない。それでも人々は、新型コロナウイルス流行の収束に伴う企業の採用ブームが落ち着いた後も、好調な数字の発表が続いていることは大まかに知っている。多くの人々は、そうした明るい内容の統計と自分自身の経験との間に大きな隔たりがあることを感じていた。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が17日に決定した利下げと、その前の週に米政府が発表した就業者数の下方修正は、多くの人々が感じていたことを裏付けている。つまり、雇用市場は見かけよりも弱い状態にあるということだ。労働統計局によると、今年3月までの12カ月間における月平均の就業者数の伸びは当初の発表の半分以下だった。

「やっぱり」という気持ちになったと話すのは、テキサス州ダラス在住のヘザー・レイノルズさん(53)だ。3月に金融サービス会社から解雇されて以来、求職活動を続けている。「両親の家に行って、父親から『仕事探しはどうなっているんだ』と言われるほど嫌なことはない」という。

 彼女は多くの人と同様、自身に何か問題があるはずだとの暗黙の非難に直面してきた。仕事を見つけることが本当に難しいことが明らかになるにつれて、そうした状況が変わることを期待している。

もう少し余裕を持つ

 不満の根拠を裏付ける証拠が見つかるのは良いことかもしれないが、自分が正しかったからといって仕事が見つかるわけではない。だからこそ、最近のニュースを見て「ほら見ろ」と言うだけでなく、行動に移すことが、自身の状況を改善する鍵になるだろう。

 第一歩は、厳しさを増す雇用環境を就職活動の「物語」に取り込むことかもしれない。レイノルズさんは経験豊富なリクルーターであり、失業が自己永続的なサイクルになりやすいことを知っている。採用担当者は失業期間が長引いている応募者について、優秀な人材であればとっくに採用されているはずだと考え、問題のある人材とみなすことがある。