
ドナルド・トランプ米大統領は、アジアなどの低コスト国に高関税を課すと脅すことで、米企業に製造業と雇用の国内回帰を促すことができると見込んでいる。
しかし、米国の労働コストは高いため、企業は労働者を機械に置き換える方法を見つける必要がある。一部の産業では、それが予想外に難しいことが明らかになっている。
例えば、米スポーツ用品大手 ナイキ は、数年前から生産の一部を中国やインドネシア、ベトナムから北米に移転しようとしてきたが、米国のブランドが柔軟で低コストの委託製造業者から脱却することの難しさが浮き彫りになっている。これらの製造業者は大量の労働力を使って米国の消費者向けに多様な製品を生産している。
ナイキは2015年、それまで非常に労働集約的だった業界で生産を部分的に自動化する野心的な取り組みに数百万ドルを投じ始めた。当時は、中国での労働コスト上昇や3Dプリンティングなどの製造技術の進歩を受けて、より少ない人数で靴を生産する新たな方法を見いだそうという機運が高まっていた。
ナイキは、米 アップル がデスクトップパソコン「Mac Pro(マックプロ)」を製造する複雑な工場をテキサス州で立ち上げた際に協力した米製造業者フレックスに目を向けた。目標は、2023年までにメキシコ中部グアダラハラの新しいハイテク製造拠点で数千万足のナイキのスニーカーを作ることだった。
新工場には依然として数千人の労働者が必要となるものの、アジアで同じ数のスニーカーを製造するのに必要な人数よりはるかに少ない。このプロジェクトに関わった複数の関係者によると、成功すれば米国での生産のモデルケースとなる可能性があった。
ナイキの競合他社も、巨大なアジアの工場を中心とした製造モデルを見直す機会を感じ取った。これらの工場では、安価で熟練した大量の労働者が手作業で生地を縫い、靴底を接着している。