【一発アウト】「遺言書の罠」に注意! 身近な人が亡くなった時のルール
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
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「遺言書の罠」に注意! 身近な人が亡くなった時のルールとは?
本日は「遺言書の基本と注意点」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
故人が遺言書を残していれば、遺族が行う相続手続は格段に楽になります。ただ、遺言書にまつわる特有の注意点もありますので、一緒に確認していきましょう。
まず、遺言書を探す
まずは、故人が遺言書を残していたかどうかを確認しましょう。公正証書遺言の場合は、全国の公証役場に設置されている「遺言検索システム」により確認することが可能です。故人の戸籍謄本と、検索システムを使う相続人の戸籍謄本を公証役場に持っていけば、故人が公正証書遺言を残していたかどうかを検索することができます。検索するだけなら、故人が遺言を残した公証役場でなくてもOKなので、最寄りの公証役場に行きましょう。
ただし、遺言検索システムを利用した結果、遺言書が残されていることが判明した場合、その遺言書の請求は、最寄りの公証役場ではなく、遺言が実際に残されている公証役場でする必要があります(郵送により交付を受けることも可能です)。なお、当然ですが、遺言書を残した本人が亡くなる前に、家族がその人の遺言書を検索することはできません。
また、令和2年7月より、法務局において自筆証書遺言書保管制度が始まりました。この制度を利用していた場合も、公正証書遺言と同様に、全国の法務局で検索することが可能です。
それ以外の遺言(自筆証書遺言)の場合には、仏壇の中や、金庫や貸金庫の中、ベッドの下、通帳などを保管している引き出しの中などに保管されていることがあります。「遺言書なんて残していないだろう」という先入観から遺言書の有無を確認せず、遺産分割協議が終わった後に、発見される場合もあります。先入観にとらわれず、一度、しっかり確認しましょう。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言には、原本・正本・謄本の3種類があります。原本は作成した公証役場で保管されているもので、正本と謄本は、遺言作成時に控えとして渡されるコピーです。正本は、原本と同じ効力を持つとされ、各種名義変更で使うことが可能です。
一方で、謄本は内容確認用として位置づけられており、名義変更で使えない可能性があります。しかし、昨今では謄本でも名義変更が可能な金融機関が増えていますので、必ずしも正本である必要はありません。お手元にある遺言書が正本か謄本かは、表紙ページの記載で確認できます。
自筆証書遺言なら検認が必須
残した遺言書が、自筆証書遺言だった場合には検認という手続が必要になります。遺言書は封筒に入れ、外から内容が見られない状態にして保管することが原則です。この封筒は、遺言書を見つけた相続人が、その場で開封してはいけません。家庭裁判所に出向き、裁判官が開封し、内容の確認を行います。
なお、もともと封がされていない遺言書は無効かというと、そうではありません。封印されていない遺言書も法的に有効です。ただ、この場合も検認手続は必要になりますので、忘れないようにしましょう。
検認は、その遺言書に法的な効力があることや、本人が実際に書いたものかを判断するために行うのではなく、検認の日における遺言書の内容を明確にし、その後の偽造・変造を防止するために行います。
検認には必ず相続人全員が立ち会わなければいけないわけではありません。出席するかどうかは各自の判断に任されます。
検認を行うのは、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。必要書類は、故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、収入印紙800円です(遺言の内容によっては必要書類が変わることがあります)。検認の申立てをする際は、申立書に必要事項を記載し、家庭裁判所に提出します。
一発アウトのNG行動! 「これ」をすると、5万円以下の過料です!
「私たちの家族は仲がいいので、遺言書の偽造なんて絶対ありません。それでも検認はやらないといけませんか?」
このような質問を受けることがあります。答えは、家族仲が良くても検認は絶対に必要になります。法律上、検認手続を怠った者には5万円以下の過料が科せられるという決まりになっています。
ただ、法律で義務づけられているからというより、検認をしないと自分たちに困ることがあります。それは遺産の名義変更のときです。自筆証書遺言によって銀行口座や不動産の名義変更をする際は、遺言書とセットで検認手続を受けたことを証明する、検認済証明書の提出が求められます。これがないと、名義変更はできませんので、結局、検認は必要になるのです。
わずらわしい検認手続は、遺族の負担を増やしてしまいます。その点、公正証書遺言や、自筆証書遺言書保管制度を使えば、検認が不要となりますので、オススメです。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)








