【捨てたら後悔】故人のマイナンバーカードをめぐる悲劇とは?
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
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マイナンバーカード、すぐ捨てないで!
現在、マイナンバーカードの交付枚数は約9900万枚にのぼり、国民の8割以上が取得しているとされています。したがって、相続が発生した際に、故人がマイナンバーカードを持っているケースは今後ますます増えていくでしょう。
では、そのマイナンバーカードは、相続手続においてどんな扱いになるのでしょうか。返却は必要なのか、それとも活用できることがあるのか、そんな疑問にお答えします。
返却義務はある?
故人がマイナンバーカードを持っていたとしても、原則としてカードの返却義務はありません。ですから、不要になった場合はICチップ部分をハサミなどで物理的に破壊したうえで、ご自身で廃棄することが可能です。
一方で、相続手続においては、故人のマイナンバーそのもの(番号情報)が必要となるケースがあります。
捨てると、どんなときに困る?
代表的な例が、「相続時預貯金口座照会制度」です。これは、預金保険機構を通じて、故人のマイナンバーと紐づく金融機関口座を一括で照会できる制度で、2021年に導入されました。口座の存在を知らなくても探し出せるという利便性の高いしくみで、相続財産の把握に役立ちます。そのため、マイナンバーがわからないと、こうした制度が使えず不便を感じることがあります。
マイナンバーは控えておこう
マイナンバーカードが手元にあればそこから番号を確認することができますし、カードがない場合でも、役所で「住民票の除票(マイナンバー付き)」を請求することで確認できます。カード自体は使えなくなりますが、カードを廃棄する前に、マイナンバーをメモしておく、もしくは番号付きの住民票の除票を取得しておくのがオススメです。
出典:『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』
なお、マイナンバーカードを使ってログインする「マイナポータル」などのサービスは、カードの失効とともに利用不可になります。たとえICチップが物理的に残っていても、公的サービスとしての機能は完全に失われます。
相続においては、不動産や預貯金の把握だけでなく、「どこにどれだけ財産があるのか」がわからないこと自体が最大の不安材料です。その意味でも、故人のマイナンバーカードは“捨てる前に一度見ておく”価値のあるものと言えるでしょう。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・編集を行ったものです)








