【オピニオン】トランプ外交政策、意外にも世界に有益Photo:Anna Moneymaker/gettyimages

 中東の戦争やウクライナでの戦争、ワシントンやシドニーでのテロ攻撃と、2025年は厳しい年だった。ドナルド・トランプ米大統領の政権は外交の定石をことごとく破り、長年にわたって確立された米外交政策の柱をほとんど覆しており、この12カ月は混乱と疲弊の日々だった。

 トランプ政権2期目の最初の年が終わりに近づく中で問われているのは、大統領の革命的な外交政策によって米国と世界が良くなっているのか否かということだ。

 懸念すべき理由は確かにある。トランプ政権の対中政策は、多くのオブザーバーがとてつもない無謀さと考えるもの(厳しい報復措置を取り得る経済大国に145%の関税を課すこと)から、他の人々があきれるほどの卑屈さと見なすもの(先進半導体の輸出許可や、動画投稿アプリ「TikTok=ティックトック」に有利な条件で事業継続を認めること)の間で揺れ動いている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対するトランプ氏のこれまでのアプローチは、戦争を終結させることなく、米国の同盟国をいら立たせてきた。

 トランプ氏が打ち出す関税政策の狂乱ぶりは、外国政府の怒りを買い、通商を阻害している。コンゴからカンボジアまで、表面的だろうが短命に終わろうが大急ぎで和平合意を手にしようとする姿勢は、紛争が未解決のままくすぶり続ける中で、米国の外交を滑稽なものに見せかねない。米国の支援は金で買えるか、少なくとも借りられると、敵対国と同盟国の両方が結論づける中、プロセス全体に腐敗と疑念の暗雲が垂れ込めている。