会計事件簿Photo:PIXTA

「架空の売り上げが計上されている」――上場企業で不正が行われた決定的な証拠となったのは、社内サーバーに保存されていた一つのPDFファイルだった。架空の売り上げ計上や不透明な取引……不正に手を染めた企業がたどる末路とは。詳しく見ていこう。(公認会計士 白井敬祐)

山口県のIT企業が
上場廃止に追い込まれたワケ

 今回取り上げるのは、山口県に本社を置くIT企業、アルファクス・フード・システム(以下、AFS社)です。

 外食企業向けの配膳ロボットやシステムを手がける同社は、東京証券取引所グロース市場に上場していました。しかし、義務付けられている半期報告書が期限までに提出できず、2025年9月、上場廃止という結末を迎えることになったのです。

 背景には、過去の有価証券報告書における虚偽の記載が発覚したことがあります。

 なぜ、彼らは不正に手を染めてしまったのでしょうか?

 同社特別調査委員会の報告書を踏まえ、窮地に陥った企業が不正に手を染め、上場廃止へと追い込まれてしまった経緯を解説したいと思います。

一つのファイルが暴いたうそ
記されていた“信じがたいタイトル”

 事の発端は、2025年春頃に寄せられた「配膳ロボットの売り上げ、ちょっとおかしくないですか?」という内容の指摘でした。

 会社側は特別調査委員会を設置して調査に乗り出しましたが、調べれば調べるほど、ボロボロと問題が出てくる事態に陥ります。過去のホテル売却にまつわる不透明な取引、倉庫から一歩も出ていないロボットの売り上げ計上……。

 そして、調査の過程で、ある決定的な証拠が発見されます。それは、社内サーバーに残されていた覚書のPDFファイルでした。

 そのファイル名には、信じがたい言葉が記されていたのです。