東証プライム市場に上場するブックオフグループホールディングスの子会社が運営する複数の店舗で、架空買取や買取額の水増しなどさまざまな不正が行われていることが発覚した。なぜ「不正の連鎖」が起こったのか。上場企業に存在してしまった“抜け道”について、会計の専門家が解説する。(公認会計士 白井敬祐)
有名企業で起こった
信じられない「不正の連鎖」とは……
「本を売るならブックオフ」のキャッチコピーでおなじみのブックオフグループホールディングス(以下、ブックオフ)で、衝撃的な事件が起こりました。
これにより、業績絶好調だった前年の2023年5月期から一転、24年5月期には決算発表が延期される事態になってしまいました。
何が起こったのか。
実は、多くの人が日常的に利用するこの身近なリサイクルショップで、複数の従業員による不正行為が次々と明るみに出たのです。
特別調査委員会の報告書では、事件の詳細や従業員たちが巧妙に不正を隠していた手口が解明され、ブックオフの管理体制の甘さが浮き彫りになりました。何をきっかけにこの不正の連鎖が発覚し、ブックオフはどのように信頼回復に向けて動いているのでしょうか。事件の全貌を時系列で追いかけ、不正の内容とその教訓に迫ります。
3000万円の「帳簿とのズレ」をきっかけに
次々と不正が発覚
事の発端は、2024年5月28日に起こりました。この日、ブックオフの子会社B店で実施された決算棚卸で、アパレル在庫に帳簿と約3000万円もの差異があることが発覚したのです。
当初は、「システムのエラーか?」と考えられましたが、他店舗でも似たような異常が確認され、事態はさらに深刻化していきました。