美術館に行っても「きれい」「すごい」「ヤバい」という感想しか出てこない。でも、もっと美術を楽しめるようになりたい。そう思ったことはありませんか?
「こやぎ先生」としても活躍する、ご指名殺到の美術旅行添乗員・山上やすお氏の書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』から「マジですごい」超絶美術をご案内します。
『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』
「フランダースの犬」の主人公・ネロが見たかった絵
さぁ、お次の作品はアントワープの聖母大聖堂からご覧いただきましょう!
――うおぉぉぉ! これもすごい迫力ですね! 大きぃぃぃぃ~!
でしょ! これはベルギーの画家ルーベンスによって描かれた、イエスが十字架に架けられる場面の「キリストの昇架」と、十字架から降ろされる場面の「キリストの降架」という作品です。それぞれ中央パネルが縦4m、横3mを超える超大作なんですよ。
――なるほど…「昇架」と「降架」で対になっているというわけですね! こうして祭壇を挟んで並んでいることでその効果もばっちり! やるな、ルーベンス!
はは、そうだったらいいんですけどね(笑)。ほんとのところを言うともともとは別々の教会の祭壇のために描かれた独立した作品だったようなんです。ただ、やはり対の作品に見えることからここに運ばれて、こうして飾られているんじゃないでしょうか。
――なーんだ、そうなんですね(汗)。でも何はともあれ結果オーライじゃないですか☆ それにしてもほんと迫力がすごいですね、なんか…ドラマティック…!
素晴らしい! まさにこの絵画のキーワードは「ドラマティック」ですよ! ルーベンスが活躍した17世紀はカトリックからプロテスタントが分離し、カトリック教徒の数が激減したころに当たります。そこでカトリックが乗り出したのが、カトリックへの宗教心を焚きつけるような、ドラマティックな絵画を使った改革だったんです!
――そうだったんですね! だってほんと映画を見ているような…舞台を見ているような、心が熱くなるのを感じますもん!
そうですね。だけどその中にそれぞれの個性があるのがわかりますか?「昇架」の方は、今まさにイエスが殺されようとしている…! というとても躍動感のある、パワフルな姿で描かれていますね。
――はい…まるでマッスルバーの出し物のようです…。
こらこら(汗)。イエスは空にいる神を見上げ、後ろの大きく黒く茂ったツタは、これからのイエスの運命に立ち込める暗雲のようですね…。それに対して「降架」はイエスが絶命した後の静かな…、悲しみが強調された構図なのがわかりますね。
――確かに…。同じように見えても、言われてみればちゃんと描かれ方が違うんですね…。
あ、そうそう。ちなみにこの作品は「フランダースの犬」に登場するってご存じでしたか?
――え、「フランダースの犬」ってあのアニメの? 小さい頃、見てましたが…。こんな絵、出てきたかなぁ?
画家を目指す少年ネロが死ぬまでに見てみたい…と願っていた絵がこの絵だったんです。大聖堂に掛かってはいたんですが、普段はカーテンに覆われて見えないようになっていたんですね。ただ最後、ネロが行き場所がなくさまよって教会にたどり着いたところ…、普段は絵を覆っているカーテンがたまたま開いていたんですね。
――そこでようやくこの絵を見られたと…。
そうです。ネロはその時、「ああとうとう見たんだ…。ああマリアさま、僕はもう思い残すことはありません」とつぶやきます。
――思い出した! このシーン泣けるんですよね…。
そこにパトラッシュがやってきて、「パトラッシュ……疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ……パトラッシュ……」とパトラッシュの横で横たわるネロ…。そして空から天使がやってきて…。
――まさか…。ネロが見たかった絵がこの絵だっただなんて…。僕は今ネロと同じ感動を味わっているわけですね!!
そうですよ! ほら、…なんだかとても眠くなってきたでしょう?
――いや、天に誘わないでください(笑)。
(本記事は『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』の一部を抜粋・編集し作成しました)











