横浜下永谷店(横浜下永谷店 筆者撮影)

中部地方を拠点とするバローが、ついに踏み出した首都圏進出。それから3カ月が経過した今もなお、その勢いは衰えることを知らない。一時的なブームに終わらず、激戦区・横浜の日常に溶け込みながら、順風満帆な航海を続けている。(フードコンサルタント 池田恵里)

幹線道路をまひさせる「目的地」の出現

「2号幹線はひどい渋滞。すごい人だかりですね」

 2025年11月21日。オープン直後のバロー横浜下永谷店(横浜市港南区)の周辺は、異様な熱気に包まれていた。

 周辺を見渡せば、サミット、ロピア、オーケーといった「関東の雄」がしのぎを削り、さらに今春にはヤオコーの出店も控えている。まさに関東屈指のスーパー激戦区とも呼べる立地だ。

 しかし、バローの戦略はこれら既存の競合とは一線を画す。同社が標榜するのは、半径2キロの足元商圏をターゲットとする従来のスーパーではない。遠方からも顧客を呼び寄せる「デスティネーションストア(目的来店型店舗)」としての姿である。

 29期連続増収という記録を持つ同社の強さをと打ち立てる同社の強さを、変遷するスーパーの歴史と、最新の決算数値から解き明かしたい。

地域密着のスーパーが離れた場所の顧客も取り込むようになった

 日本のスーパーマーケットの歴史を振り返ると、バローがいかに「時代の先」を見据えているかがわかる。業界は今、大きなパラダイムシフトの渦中にあるからだ。

 1990年代までのスーパーのキーワードは「地域密着」「生活道路」「御用聞き」だった。徒歩や自転車での来店を前提とし、半径1~2キロをターゲットとした時代だ。商店街の入り口や住宅地の中心に出店し、特定のエリアに集中して看板を見せることで、物流効率を高めると同時に「スーパーといえば〇〇」という心理的ドミナント(支配)を築く戦略が主流だった。

 それが、2000年代に入り変わる。

 車社会の進展に伴い、イオンを筆頭に広大な駐車場を備えた郊外型店舗が爆発的に増加した。「ワンストップショッピング」を追求し、テナントとして衣料品や100円ショップを入れ、家族で半日過ごせる場所へと進化した。商圏は「車で15~20分(半径5~10キロ)」へと拡大し、規模の利益で地場の弱小スーパーを淘汰していった。

 そして今、バローが突きつけているのが「デスティネーションの時代」だ。単なる利便性や価格の多寡ではなく、「あそこの魚を買いたい」「あの惣菜のためにわざわざ車を出したい」という強烈な動機付け(カテゴリー・キラーとしての側面)を行い、近隣住民のみならず広域からの顧客をも取り込む。この戦略が、同社の決算に劇的な変化をもたらしているのだ。