6月18~19日のFOMC(米連邦公開市場委員会)には、大きなサプライズが用意されていた。バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長によってQE3(量的緩和第3弾)の縮小および終了時期が明示されたのだ。
米国債市場参加者の多くは、経済情勢次第である点を重視し、世界経済の伸び鈍化の中、QE3の縮小も早くて2014年以降とのコンセンサスを形成していた。バーナンキ議長が「年内」という早い縮小時期を明示したのは、いくつかの要因が重なったためだろう。
一つは、米国の財政赤字が予想外に減少した点だ。住宅市場の好調を背景にGSE(政府支援企業)から政府への配当が増加したことが主因だが、米国の財政改善は、米国債の利回り曲線の傾きがきつくなるリスクを軽減させ、FRBの出口議論を活発にした。
かねてQE3による資産インフレが懸念されていた点も重要だ。特に、住宅市場では低金利を背景とした「投資案件」の伸びが著しく、むしろ住宅価格の過度な上昇が家計の住宅投資意欲を削ぐことで、米国景気の抑制要因となることが懸念されていた。
また、この状態で市場との対話が不足したままQE3を終了させれば、住宅投資の急減を招きかねず、FRBは住宅市場を「冷却」する必要があったとみられる。
14年1月に任期満了を迎えるバーナンキ議長がQE3の出口へのロードマップを描きたがっていたことも想像される。そこでQE3を年内に縮小させ、「失業率7%」という条件付きながら、14年央に終了させるとの見通しの発表に至ったのだろう。
以上の複数の要因が重なったことで、FRBによるQE3縮小(終了)議論は結果として相当に早く進展したが、雇用改善が大前提である点を見逃してはいけない。
失業率が低下し、それに連動する形で賃金が上昇すれば家計の購買力は高まり、消費や投資も活発化する。また、賃金上昇で家計の信用力が高まれば、銀行の家計への貸し出し態度も緩和され、「投資案件」中心であった住宅市場も、「マイホーム取得」を中心とした健全な市場へと変質するだろう。