庄田もサワも、初めてだった

「初めてなんです。こうやって男の方と食事をするのが」

 なんとも素朴な答えが飛び出した。

「男の方? え、わしのこと?」
「はい」
「あ、あ、そうなんだ。なんだそれで。ははは」

 庄田のリアクションもなんかおかしい。

「ごめん。それは申し訳なかった。初めての男性との食事がわしのような男で」

 ふたりは少し沈黙。そのあとの庄田の告白もびっくり。

「でもわしもなんだ。わしもこれが初めての女性と2人きりの食事だ」「だから心臓がそばと一緒に口から飛び出しそうで、それでただただ喋ってごまかそうと」「ごめんそっちのことまで気づけなくて」

 自分語りが多すぎたことをちゃんと謝る庄田はじつに紳士的だ。

「でもなんか良かった。おサワさんも初めてで」
「はい。私もなんか良かったです。庄田さんも初めてで」

 もじもじするふたり。サワがとてもいい笑顔になっている。

 ヘブンとトキが湖畔を歩いている。

 スズムシは「リリリリ……」
 うまおいは「スイッチョン」

 オノマトペで虫の声を再現していると、ヘブンが「すばらしい人達」と、虫の声を聞いているらしき風情ある男女ふたりに気付いた。

 女性の顔にトキはびっくり! それはサワと庄田だった。

 なんかいい感じである。これは、サワも優秀な庄田と結婚して、川を出られるのでは? トキ、なみ、サワ、もう全員、結婚退社じゃなくて、全員、結婚脱出(川の向こうへ)でいいのではないか。

長い、長すぎる!初デートで「自分語りばっかり」な男には理由があった〈ばけばけ第83回〉
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