米国のトランプ大統領 Photo:Anadolu/gettyimages
米国のベネズエラへの軍事行動と
国際秩序の瓦解
第2次世界大戦の終結から80年が過ぎ、世界は再び混沌の時代に入った感がある。
2026年が明けてまもなく、米国のトランプ大統領がベネズエラに陸軍の精鋭部隊などを派遣し、マドゥロ大統領夫妻を拘束して米国に連行した。
首都のカラカスにある大統領官邸はキューバ人の警護部隊により守られていた。米国の部隊との激しい銃撃戦の末、キューバ側の発表によれば32人のキューバ人が殺害されたという。トランプ大統領はキューバに対し、ベネズエラから得ていた石油と資金はもう届かないと述べ、自分との取引に応じるように圧力をかけている。
トランプ大統領はデンマークの一部であるグリーンランドの領有にも執着し、そのための軍事力の行使すら否定していない。
1月半ば、ホワイトハウスのレビット報道官は、トランプ大統領はアメリカによるグリーンランドの領有を最優先事項として非常に明確に打ち出しており、それが米国の安全保障にとって最も重要だと述べた。そうは言うが、トランプ氏の本当の狙いは安全保障ではなく、レアアースを含むグリーンランドの豊富な資源なのではないかとも報じられている。
ベネズエラの場合も、石油が最大の関心事であることが露呈し始めている。まるで帝国主義の時代に戻ったかのような米国の振る舞いには唖然とするばかりだ。欧州では、米国がデンマークに武力行使するような事態になれば北大西洋条約機構(NATO)は崩壊の危機に瀕すると広く認識されている。トランプ大統領は、米国のグリーンランド領有に反対する国には追加関税を課すと言い始めた。
ロシアは2014年に実力でクリミアを併合し、その8年後にウクライナに全面侵攻して戦闘を続けている。また、中国は南シナ海での権利主張に法的根拠はないとする2016年の国際仲裁裁判所の判決を無視し、フィリピンへの威圧的行動を続ける。
言うまでもなく、過去にも大国が国際法を無視して武力を行使することはあった。だが今は、米中露という三大国が揃って実力行動に出ている異常事態だ。第2次世界大戦後の国際秩序を支えた規範が崩れ、「力こそ正義」という無法状態が広がりかねない。
トランプ大統領は4月に訪中する予定だが、たとえその時点で米中のディールが成り立ったとしても、価値規範を共有しない大国間の関係は決して安定しないだろう。人類は、予測可能性の低い大国間競争の時代に突入した。







