2025年10月28日に東京・元赤坂の迎賓館で日米関税合意の着実な履行と、希土類(レアアース)の供給確保に関する2文書に署名した高市早苗首相とトランプ大統領 Photo:JIJI2025年10月28日に東京・元赤坂の迎賓館で日米関税合意の着実な履行と、希土類(レアアース)の供給確保に関する2文書に署名した高市早苗首相とトランプ大統領 Photo:JIJI

「南鳥島のレアアースで脱中国だ!」と喜ぶのは早計です。中国への依存度を下げる策として、政府は深海採掘に本腰を入れ始めましたが、実はそこには落とし穴が3つも存在します。このままでは計画が頓挫するばかりか、日本の産業界が干上がってしまう恐れさえあるのです。「夢の国産レアアースで脱中国」が“詰んでいる”現実と、解決のシナリオを提示します。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

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南鳥島に米軍基地?
仰天シナリオに現実味

 未来予測を専門とする関係で、毎年この時期に「びっくり予測」をしています。

 日経マネーの今月号に取り上げていただいたのが「南鳥島に海上米軍基地計画」という予想でした。

 確率は低いけれどももしかしたら今年、そんなニュースが飛び込むかもしれないという未来予測です。

 この予測の話をしたのは昨年の11月頃でしたが、南鳥島のレアアース開発はその後、大きな話題になりました。きっかけは高市首相の発言で日中関係が冷え込んだことです。

 レアアースはEVや医療機器、ハイテク機器などあらゆる先端製品に使われる希土類元素の総称で、精製では中国が9割超の世界シェアを占めています。そして高市発言への報復として日本向けのレアアース輸出規制が始まりました。

 レアアースは中国にとっては日本だけでなくアメリカやEUに対しても戦略物資です。先ごろ行われたG7でも対中依存度を下げることが重要議題にあがりました。西側世界のリーダーの中でもトランプ大統領はこの依存状況をなんとか変えたいと考えている政治家の筆頭ではないでしょうか。

 そのような流れで日本では南鳥島に脚光があたることになりました。南鳥島近辺の深海には純度の高いレアアース泥が沈殿していて、その埋蔵量は世界全体の需要の数百年分だとされています。

 ただ水深6000mの深海から泥を大量に引き上げるのはコストだけでなくそもそも技術的に難しいとされていて、2013年にレアアースの存在が発表された後も長らく調査段階が続いていました。

 日本政府が採掘について本格的に投資をする方針を表明したというのが直近のニュースです。

 内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」ではまず今年、水深6000mの海底からレアアース泥を試掘し、来年には一日あたり350トンのレアアース泥回収能力の実証実験を実施、そして2030年頃に商業採掘を実現したいとしています。

 この日本政府の方針で、西側諸国のレアアース問題は解決するのでしょうか?実は簡単には乗り越えられない問題が存在しています。冒頭に「びっくり予測」としたように、解決にはいくつものハードルがあります。私の予測で南鳥島に「海上米軍基地」を組み合わせた予測にしたのも、いくつかある問題のひとつを暗示したものです。

 何が難しいのか、そしてなぜそこに米軍が登場するのか、この記事では大胆予測の背景にある地政学的な事情を説明させていただきます。