『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第4話「判決」から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。
17歳だけど精神年齢は小学6年生レベル、少年院を出た後の人生
今回のマンガでは、少年院で真面目に過ごし「模範生」となった田町雪人少年が、11カ月後に出院し、地元のある建設現場で働くことになるというストーリーです。
少年院を出たとはいえ、20歳未満の少年たちは仮退院という形で出院し、基本、20歳になるまで保護観察がつきます。保護観察官や保護司のもとで定期的に面接などを受けながら再非行しないか指導監督、支援が続けられるのです。少年院を出たからといって終わったわけではありません。
出院後の進路として、就労、進学・復学、無職・施設入所などに分かれますが、多くが就労します。こういった少年たちを引き受け入れてくれる協力雇用主がおられ、法務省によると全国で約2万5000企業あるそうです。
雪人も運よく地元の会社に就職することができました。仕事を覚えるのが大変でしたが、「今度こそ真面目に働いて自分の人生を歩んでいこう」と頑張っています。またSNSを通して彼女(あゆみ)とも知り合い、これまでになかった幸せを感じます。
しかし話はそう簡単には進みません。
雪人はこのとき17歳。同年代は普通高校生で勉強に恋愛、部活動などに勤しみ青春を謳歌している頃です。少年院の出院式で真面目に頑張るといくら誓ったところで、まだまだ遊びたい盛りです。中学を卒業してから少年院に入るまでに建設現場で働いていた経験はありますが、そこでも無断欠勤、暴力などの問題を繰り返してきました。
しかも雪人のIQは68で、精神年齢は最大でも小学6年生レベルでした。
みなさんも小学6年生に戻ったつもりで想像してみてください。初めての慣れない仕事。なかなか覚えられず失敗ばかりする日々……。職場の人たちが障害に無理解であれば、不真面目と誤解され叱責され続けます。雪人も自信を失いストレスも溜まっていたところ、現れたのが地元の先輩で、“ワル”でもある諸岡でした。
ここから雪人は負のループに陥っていきます。
諸岡は断れない雪人を遅くまで遊びに連れまわし会社を無断欠勤させます。それが元で雪人は会社をクビになります。
悪く思ったのか諸岡は、金銭に困った雪人に振り込め詐欺の受け子の仕事を紹介します。受け子の仕事がうまくいき、5万円をもらえたことで雪人は歪んだ形ですが次第に自信をつけていきます。
しかしここでも雪人は失敗をしてしまい、責任を問われ多額の金銭を詐欺グループから請求されてしまいます。追い詰められた雪人はあゆみからお金を借りることを思いつきました。詐欺グループとの問題は一応解決したものの、その後、諸岡からの連絡が途絶えていました。
やがてあゆみからお金の返済を求められますが、お金を返せないことであゆみから罵倒され、カッとなって雪人はあゆみを殺害してしまいます。
裁判では弁護士は知的障害を理由に雪人の減刑を求めましたが、「障害だからといって刑を軽くしてもらわないでいいです」と雪人は語ります。
私が本エピソードを通して伝えたかったことは、障害をもった非行少年たちの擁護ではありません。あゆみのような被害者をこれ以上生まないために何ができるのか、という問いです。そのために雪人のような少年たちを社会はどの段階で見つけ、どう支援すればいいのかを考えてもらうことです。
なお、本エピソードは『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』(新潮新書)にも詳しく記していますので、ご興味ある方はぜひそちらもお読みください。
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社







