『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている『ケーキの切れない非行少年たち』(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第1話「三等分できない少年たち」から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。
衝撃的だった「殺人事件を起こした少年」の目
「ここに丸いケーキがあります。3人で公平に分けて食べる場合、どうやって切ったらいいでしょうか」
紙に○を描きケーキに見たて、非行少年たちに鉛筆で切らせてみます。すると、彼らは円に卜を描くような切り方しかできませんでした。
マンガの原作の元である『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)のテーマにもなっているケーキが3等分できなかった非行少年たち。このコミックには私が医療少年院に単身で乗り込み、そこで知り得た驚くべき非行少年たちのストーリーがリアルに描かれています。
マンガ化に当たり新たに書き下ろした原作を、漫画家の鈴木マサカズ先生に2次元の世界に広げてもらいました。少年たちの新たな表情にも気づくこともできました。
3等分の結果はマンガにも描かれていますが、新書版では次のような感想も散見されました。
「ケーキを3等分できないと非行少年になるのですか?」
「数学的には3等分は実は難問だ」
「少年たちの切り方でも正確に3等分されていたら間違いではない」
しかし、私は3等分ができないことが問題であるなどと訴えたかったのではありません。
マンガにある通り、円にトを描くような切り方しかできない少年たちが、これまで社会でどれだけ苦労を強いられてきたかを知ってもらいたかったのです。
彼らは非行や犯罪を行って少年院に入ってきましたが、学校や家庭では、障害や生きにくさに気づかれずイジメや虐待に遭ってきたかつての被害者でもありました。そんな少年たちが目の前にたくさんいたのです。守られるべき障害児が被害者となり、そして加害者になっていく実態を看過してはならない。
そんな思いで新書版を書かせていただきましたが、誤読されないようマンガにして、分かりやすく伝えてはどうかというお話もあり、原作を書かせていただく運びになったのです。
第1話では少年院の概況と主人公の六麦医師の医務課での診察場面、そして最初のエピソードの少年となる田町雪人の女性殺害現場と、逮捕のニュースからなります。
実はマンガ化の話をいただいた時に、まっ先にある少年のことが頭に浮かびました。少年院から出院して、数年後に殺人事件を起こした少年です。
彼の少年院在院時の様子は今でもよく覚えています。どちらかと言えば大人しく、教官の言うことも素直に聞き、目立った問題行動もなく勉強も真面目に取り組んでいた少年でした。
しかし出院後に彼が起こした殺人事件の内容や事件に至った経緯を知り、そして公開された顔写真を見ると、改めて障害をもった彼にとって、社会で普通に生きることがいかに過酷だったかを感じざるを得ませんでした。
少年院ではまだ幼く柔らかだった少年の表情が、悪びれることなく、むしろふてくされ、強い恨みを抱き何かを睨みつけているような鋭い目つきの男にひょう変していました。
いったい社会が彼に何をしたのか、彼は何を感じていたのか。今回、マンガの六麦医師の目を通して再現してみました。具体的な内容は2話以降になります。もちろん本人や被害者が特定されないよう、随時事実内容を変えてありますが、リアリティは十分にお伝えできるかと思います。
マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社







