「どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか」――。この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、同書に収録されている75の事例の中から、特に現場で導入しやすく、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選して紹介していきます。
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他の自販機と同じ飲み物なのに、
なぜそこから買ってしまうのか?
駅のホームや公共施設の片隅に置かれた自動販売機。どこにでもある普通の飲料ラインナップと思いきや、そこにはこう書かれていました。
「この自販機の売上の一部は、◯◯基金に寄付されます」
不思議なもので、となりに全く同じ価格、同じ商品が並んだ自販機があっても、なぜか多くの人がこの「寄付つき自販機」を選んでしまうのです。
しかも、目立つ色や派手な仕掛けをしているわけではありません。
なぜ、この一文だけで、売上に差が出るのでしょうか?
実はそこには、「無意識のうちに人が行動を変えてしまう、心の仕掛け」が隠れているのです。
「飲み物を買う」が
「社会貢献に変わる」魔法の言葉
通常、自動販売機で飲み物を買う行動は、完全に「自己満足」です。喉の渇き、気分転換、習慣……理由は様々でも、自分のためにお金を使っています。
ところが「売上の一部が寄付される」と知った瞬間、その行為の意味が変わります。たった1本買うだけで「誰かのためになる」=「ちょっといいことをした自分」になれるのです。
このように、「買うこと」が「善い行い」になると、人は心理的にとても満たされます。
この現象は、「温情効果」による購買行動です。
ここでいう「温情効果」とは、寄付の額にかかわらず、「自分が善い行いをした」という自己満足感や喜びを得るために行動を選択する傾向のことです。
忙しくて寄付やボランティアをする余裕がない人にとって、このワンアクションは「手軽にできる自己肯定感アップの行動」となるのです。
社会貢献のハードルをぐっと下げている
寄付や支援と聞くと、多くの人は以下のような壁を感じます。
・手続きが面倒そう
・継続できるか不安
・どこに寄付すればいいかわからない
しかし、自販機での商品購入なら、
・現金やカードなどで簡単に買える
・喉の渇きを潤すついでに寄付できる
・1本120円前後でOK
というように、寄付に対する心理的・実務的な壁がすべて取り払われています。この「簡単すぎて良心をくすぐる」構造が、人を動かす大きな原動力になっているといえます。
良いことをしたという記憶が残り、
リピーターになる
一度この自販機で購入すると、多くの人はこう感じます。
・「同じ飲み物なら、またここで買おう」
・「ちょっとしたことで支援になるなら、悪くない」
・「次もいい自分でいたい」
つまり、「リピートの理由が味や値段ではなく、自分の行動に意味があるかに変わる」のです。
これこそが、「自己一致性の原理」を利用した販促戦略です。
ここでいう「自己一致性の原理」とは、人は「良い行動をした自分」という自己イメージ(自己概念)を持つと、それに反しないような行動を取ろうとすることです。
この心理が、自販機での繰り返し購入を後押しし、「善い行いをする自分」と「自販機での購入」という行動を一致させようとします。
他のお店でも応用可能な「寄付」の仕掛け
この「寄付つき自販機」の考え方は、様々な業種・業態で応用が可能です。ポイントは、「高額な寄付」ではなく、誰でもできる善行の入り口にすることです。
そしてそれを、商品に書いたり、宣伝文句(POP)で見せたり、レシートに印字したりして、伝える工夫を入れることで、初めて販売促進効果が生まれるのです。
・飲食店:「◯◯定食の売上の一部は、地域の子ども食堂へ寄付」
・通販サイト:「購入1件につき1本の木を植樹」
・お菓子ブランド:「1個売れるごとに、動物保護団体を支援」
まとめ
「売上の一部を寄付します」と書いた自動販売機の売上が良いのは、
・「温情効果」により、善意を引き出す「ちょっと良いこと」心理を刺激している
・「自己一致性の原理」により、リピートの動機を「自分の行動の意味」にすり替えている
・社会貢献のハードルを極限まで下げている
という、感情と行動をつなぐ販促戦略の仕掛けが働いているからなのです。
あなたのビジネスでも、「買うことが誰かのためになる」仕組みを取り入れてみてください。それは単なる売上アップだけでなく、「選ばれる理由」を手に入れることにもつながります。
(本稿は『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』の一部を抜粋・編集したものです)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。




