実績や肩書より「この人は自分で走れるか」を見る。計画を与えず、人に賭け、夢中を問う。はみだし者を育て続けたMITのランガー研究室の発想を、成果が伸び悩む現場へ活かすにはどうすればいいでしょうか。
楽天グループ代表取締役会長兼社長・三木谷浩史氏をはじめ、Google元会長やZoomの創設者も絶賛する世界的ベストセラー『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』をもとに解説します。

【何と答える?】仕事ができる人が「初対面で相手を見抜く」ためにする1つの質問Photo: Adobe Stock

「自立心」があるかを探る

イントレプレナーシップとベンチャーマインドセットの卓越したモデルの一つが、マサチューセッツ工科大学(MIT)化学工学科のランガー研究室だ。

ロバート・ランガー率いるこの研究室の研究者たちは、1000件を超える特許を申請し、400社を超える製薬・バイオテック企業にライセンスを供与している。

ランガーはいまや史上最も引用されている工学者だ(40万回近く引用され、その数は増え続けている!)。

40社を超える企業がこの研究室から誕生し、ランガーはフォーブス誌のビリオネアリストに名を連ねるまでになった。

私たちが会いに行ったとき、ランガー教授は研究室の代表ではなく、学生の一人だと勘違いしてしまうような佇まいだった。グレーのTシャツを着て、「ボブです」と楽しげに自己紹介し、私たちの質問一つひとつにあふれんばかりのアイデアを返してくれた。

ランガーの物語はあまり幸先の良いスタートではなかった。キャリア初期には仕事がなかなか見つからなかった。化学工学や医薬の分野から石油・エネルギー分野への転向を勧められたり、「君が言ったことは何も信じられない」と先輩研究者から批判されたり、上席研究員からたばこの煙を顔に吹きかけられながら「別の仕事を探し始めた方がいい」と言われたこともあった。

はみだし者の大いなる支持者だったボストン小児病院のジュダ・フォークマン医師が、そんなランガーにチャンスを与えた。

そのキャリア初期に直面した問題が、他の大半の大学や企業の研究室とは大きく異なる原則に基づいて、自分の研究室をつくることにつながったと考えられる。

実際、ランガーの研究室は、ベンチャーマインドセットを適用した模範例のように運営されている。

どの研究室でも人は重要だ。しかし、ランガー研究室で活躍してきた900人の研究者は、実際に研究室の最終「プロダクト」とみなされている。

ランガーは独特の経歴を持つ人材をよく迎え入れる。

私は人に賭けてみるんです」とランガーは語ってくれた。「現場の全体的な説明以外に、所定の計画は何も示しません。一人ひとりに見つけさせるんです。私は案内人にすぎません」。

ある研究者がランガーに近づいて、自分に何に取り組んでほしいかと尋ねると、もどかしいほど意外な返事が返ってきたという。

君が夢中になれることは何?

ランガー研究室の文化とアマゾンやグーグル、ネットフリックスの文化との類似点に気づいただろうか。自由と自発性を重んじれば、素晴らしい発明につながると、ランガーは確信している。

年間数千人の応募者からわずか数人の採用者をどうやって選ぶのかと尋ねると、「最高のアスリートを探します」とランガーは答える。

そして、こう付け加えた。

「ここで活躍する人たちはみな自立心のある人たちです」

(本記事は『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』から一部を抜粋・編集しています)