写真のパチンコ店の店内はイメージです。ユニバーサルエンターテインメントとは関係ありません Photo:Travel Wild/gettyimages
パチスロ大手・ユニバーサルエンターテインメント(UEC)は2025年12月期決算で、2314億2500万円の最終赤字に沈んだ(前期は155億6900万円の赤字)。元凶となったのが、フィリピンで経営するカジノホテルの減損損失である。UECの統合型リゾート(IR)事業が低収益となっている構造問題を、カジノ業界、パチンコ業界、金融機関関係者らへの取材で徹底解明する。創業者の父を社外に放逐するクーデターを経て、24年に社長に就いた岡田知裕社長は経営を再建できるのか。同社の成長戦略の是非も明らかにする。(フリーライター 佐藤淳一)
社内クーデターで放逐された創業者・岡田和生氏が
「私が会社を取り戻すしか再生の道はない」と語る“緊急事態”
「将来予想をゼロベースで見直し、保守的な前提に置き換えた結果、統合型リゾート(IR)事業を中心に約2291億円の減損損失(特損)を計上しました」
2月12日に行われたパチスロ大手・ユニバーサルエンターテインメント(UEC)の決算説明会で激震が走った。岡田知裕社長がうつむき加減で巨額損失の計上を公表したのである。
UECはパチスロなどの遊技機製造販売事業、IR事業を日本の柱とするエンターテインメント企業だ。IR事業は連結子会社TIGER RESORT,LEISURE AND ENTERTAINMENT(TRLEI)が運営するフィリピンのカジノホテル「オカダ・マニラ」がメイン事業となっている。
2025年12月期のUECの最終損益は2314億2500万円の赤字(前期は155億6900万円の赤字)。無配となった。
「オンラインで行われた説明会では、特損がメインテーマとなった。しかし社長や役員の説明は危機局面とは思えないほど空疎で中身が乏しかった。いきなりの特損発表ということもあり、問題を分析する時間もなく株主の質問もまばらだった。決算説明会は議論が深まらぬまま1時間の予定が40分ほどで切り上げられるという消化不良なものでした」(金融機関関係者)
オカダ・マニラはUECの創業者である岡田和生氏が、パチスロメーカーからの脱却を目指して手掛けた新事業だった。16年にオカダ・マニラをオープン、世界で初めて日本人オーナーが経営するカジノホテルとなった。
オカダ・マニラは日本でも本格導入されるIRの先駆モデルになると思われていたが、その歩みは常に混乱と共にあったといえる。
カオスは和生氏が17年にUECの社内クーデターにより失脚したことから始まる。
UECの全ての事業から追放された和生氏だったがオカダ・マニラに並々ならぬ執着を持っていた。22年には和生氏の意向を受けたグループがオカダ・マニラを物理的に占拠、実効支配する。しかし、フィリピンのカジノ規制当局「PAGCOR」の裁定により原状回復が指示され、TRLEIが和生氏から運営権を奪還する。
混乱はUECでも続いた。今度は和生氏放逐のクーデターを主導したとされる富士本淳氏がつまづく。社長時に6億円近い報酬を受け取り、会社を私物化しているという批判を受けたばかりか、不正送金疑惑で株主代表訴訟を受け、約67億円の賠償命令を受けたのだ。富士本氏は24年に社長を退任。現在は岡田和生氏の長男である岡田知裕氏が社長としてUECのかじ取りを任されている。
「知裕氏は、三井住友銀行を経てUECに入社。ところが二人の親子関係は実に複雑なのです。17年の社内クーデター時には、知裕氏は富士本氏と手を組み父親解任を主導した。子供の造反でUECを放逐された和生前会長の姿は“パチスロ界のリア王”とメディアで話題となりました。二人の親子関係は完全に断絶しており、和生氏は『知裕と連絡が取れない』と度々嘆いていた」(パチンコ業界関係者)
「24年9月の株主総会のときです。社長に就任したばかりの知裕氏が壇上でうつむき加減だったので、株主から『なんでずっと下を向いているんだ』と指摘されたことがありました」(株主総会出席者)
創業者が去った後、紆余曲折の末に新体制となったUECだったが、新たな経営陣は急速に求心力を失い色あせていく。知裕氏が社長就任後にUECの株価は半減、17年には4000円台を記録していた株価は、本稿執筆時の2月16日の終値が744円前後に低迷している。昨年12月2日には大手格付機関のS&PがUECの格付けを『B-』に下げたばかりだった。新体制に対する市場の失望は明白だった。
S&Pが問題視したのが、やはりオカダ・マニラの経営不振だった。S&Pのレポートでは「UECでは、フィリピンのカジノリゾートの業績低迷が続き(中略)TRLEIのゲーミング収益は過去2年近く、前年同期比で10%以上の減少が続いていた」と指摘されている。
株価の低迷、S&Pの格下げというネガティブな状況の中で噴出したのが2291億円の特別損失というニュースだったのである。
なぜ2291億円という巨額の損失が計上されるに至ったのか。
「オカダ・マニラは一説によると20億ドル以上ものお金が投下されているとされています。運営会社であるTRLEIの業績はコロナ後に回復基調にありましたが、24年から再び悪化し続けていた。巨額の資金が投下されているのにもかかわらず業績が悪く、市場の信頼を得るためにはどこかで損失計上を行う必要があったものとみられています」(前出の金融関係者)
UECは25年11月13日に業績の下方修正を発表したときに「IR事業においては、フィリピンのカジノマーケット全体でVIPマーケットが低迷する中、マスマーケットの競争激化や観光客数の減少等により急激な市場変化が生じており、予想より厳しい経営環境となっております」と説明しており、今回の特損においても同じ趣旨の説明を行っている。
UECはフィリピンでの事業環境の悪化を言い訳としているが、フィリピンのカジノ事情に精通している関係者(以下、カジノ関係者)は「実際はオカダ・マニラの独り負け」であると指摘する。
こうした現実は経営数値にも表れている。24年のオカダ・マニラのEBITDA(利払い、税引き、償却前利益)は76億5900万ペソで前年比37.7%減となっている。フィリピンの競合カジノのEBITDAを見てみると、Solaire Resortは166億ペソ(前年比14.0%減)、Newport World Resortsは92億ペソ(同12.2%増)、City of Dreams Manilaは102億ペソ(同10.5%増)となっている。競合他社が耐え忍ぶ中、オカダ・マニラだけが大きく沈んでいるのだ。
例えば有価証券報告書を見ると、オカダ・マニラの従業員数は6420人とされている。前出のカジノ関係者が続ける。
「採算的にオカダ・マニラの従業員数が多過ぎるといわれており、2~3割は削減してもいい。一方で建物の老朽化が進んでおり改修工事などの支出は膨らみ続けている。
オカダ・マニラのラスベガス風豪華カジノというコンセプトも古くなりつつありフィリピンのカジノマーケットの中で優位性が保てなくなっている。経営陣にカジノに精通している人物がいないのも弱点です。例えば韓国資本のHann Resortsは、韓国色の強いコンセプトで運営されており新規顧客の誘致に成功しています」
オカダ・マニラは「底の抜けたバケツ」――つまり資金を注いでも回収できない底なし構造になっているのではないか。UECの巨額損失を巡って、いま市場ではこうした不安の声が広がっている。
次ページでは、投資家らの不安の背景にあるカジノ事業の継続性と、財務の健全性に関する“二つの疑問点”を明らかにするとともに、UECが示した経営再建計画の実現可能性などに迫る。







