ユニクロとしまむら「アパレルの稼ぎ方」の決定的な違い『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第53回では、アパレル企業における「粗利率」について解説する。

「まるまると太らせて、あとでじっくりと味わう」

 自らが起こしたアパレルメーカー・ハナオカの新店舗立ち上げの場で、宿敵である一ツ橋商事の井川泰子と対峙(たいじ)することとなった主人公・花岡拳。だが井川はこれまでの態度とは打って変わって花岡に対して下手に出て、ハナオカの自社工場の見学を希望する。

 その夜、井川は部下の高野雅人に指示していたハナオカの調査レポートを受け取る。高野が「調べてみて驚きました」と語るとおり、ハナオカの業績は素晴らしいものだった。レポートによると、ハナオカの粗利率は54%。年商は約45億円で、海外店舗を含めて35店を出店している。

 成長の理由について高野は、ハナオカがTシャツ専門店――つまりワンアイテムの単品商売で、ロス削減や商品管理の簡素がなされた結果だと分析。「広大なお花畑をひとりで刈り取っているようなものです」と例える。それを聞いた井川は、上場後のハナオカ買収をより一層強めてこう語った。

「だったらいただくまでか。今のうちに好きなだけエサを食っとくといいわ。まるまると太らせて、あとでじっくりと味わうとするわ」

「薄利多売」でも勝ち組になった有名アパレル企業

漫画マネーの拳 6巻P185『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 あくまで漫画とはいえ、ハナオカの粗利率は54%。これは実際のアパレル業界においても相当上位の数字と言って過言ではない。

 ユニクロを展開するファーストリテイリングをはじめ、アンドエスティ、ワールド、オンワードホールディングスなど、上場する時価総額トップアパレル企業とほぼ同様の値であり、それが実現できるのは本連載で何度も登場するSPAモデル(Speciality store retailer of Private label Apparel。企画から製造、物流、販売までのサプライチェーンを一貫するアパレルのビジネスモデル)のなせる業とも言える。

 ところで、時価総額では上場アパレル企業で上位ではあるものの、低い粗利率の企業も存在している。その代表がしまむらだ。同社の粗利率は、過去数期30%台前半で推移しているが、好調な業績をキープし続けている。

 同社の強みは、名前の挙がった他のアパレル企業と比較しての、販管費率(販売費及び一般管理費/売上高)の低さにある。つまりは、商品の粗利率は他社と比較して低いものの、運営コストを下げることで、「薄利多売」でのビジネスを拡大しているということなのだ。

 同じくアパレル大手のワークマンも、粗利率が低く、販管費率も低いという、同様のモデルで成功を収めている。アパレル業界の戦い方も各社それぞれというわけだ。

 生産部門のトップである片岩八重子(ヤエコ)の部下、佐伯真理子は、ヤエコが井川と連絡を取り合っていることを知り、花岡に相談する。そこでヤエコがIPO(新規上場)反対派に回った理由を理解した花岡だが、ヤエコやほかの幹部陣の思惑をも飲み込んでIPOを目指す決意を新たにする。

漫画マネーの拳 6巻P186『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 6巻P187『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク