◆なぜ大ピンチの後に成功できたのか?
眠れなくなるほど面白い文豪42人の生き様。芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、川端康成、三島由紀夫、与謝野晶子……誰もが知る文豪だけど、その作品を教科書以外で読んだことがある人は、少ないかもしれない。そんな人に向けて、文芸評論に人生を捧げてきた「文豪」のスペシャリストが贈る、文芸作品が一気に身近になる書『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)。ヘンで、エロくて、ダメだから、奥深い“やたら刺激的な文豪たちの知られざる生き様”を大公開!
イラスト:塩井浩平
29歳でデビュー
芽が出たのは40歳ごろの遅咲き作家
歴史のうねりがもたらした
思いがけない「追い風」
江戸川乱歩が大正末期から昭和初期に活躍した背景には、“時代の波に乗る運”もありました。というのも、関東大震災をきっかけとして巻き起こった“円本ブーム”があったからです。
帝都を襲った未曾有の大災害
大正12(1923年)に発生した関東大震災では、木造の建物が多かったこともあり、数え切れないほどの家屋が倒壊・焼失し、甚大な被害が広がりました。死者・行方不明者は約10万5000人にも及んだといわれます。
復興のエネルギーが生み出した
「大衆消費社会」の幕開け
その震災の影響で関西方面に移住した人も多かったようですが、その後、東京は復興し、その過程で“新しい消費の波”が訪れます。
戦後の高度経済成長期の「大量生産・大量消費」には及ばないものの、昭和初期にも新しいモノが大量につくられ、大量に売れるようになります。この影響で、本もずいぶんと安く売られるようになりました。
【解説】社会の大きなうねりを
「追い風」に変える視点
乱歩が国民的な人気作家へと駆け上がった背景には、間違いなく彼自身の才能がありました。しかし同時に、震災復興という社会の巨大なうねりと、それに伴う「大衆消費社会の到来」というマクロトレンドを見事に捉えた点も見逃せません。
ビジネスにおいても同様です。どれほど優れたスキルや商品を持っていても、市場の波に乗れなければスケールさせることは困難です。時代の変化という「外部環境の追い風」をいかに自社のビジネスや個人のキャリアに引き寄せるかという視座が不可欠なのです。
ピンチの後に訪れる
「パラダイムシフト」を見逃さない
未曾有の大災害は人々に深い悲しみをもたらしましたが、その後の復興プロセスは、出版業界における「円本ブーム」のような新しいビジネスモデルを生み出しました。現代のビジネス環境においても、経済危機や社会的な混乱などのピンチの後には、人々の価値観や消費行動がガラリと変わるパラダイムシフトが必ず起こります。
既存のやり方に固執するのではなく、ゲームのルールが変わる瞬間にいち早く気づき、新たなニーズへと柔軟にアプローチを変えていく姿勢が求められます。
「運」を掴みとるための周到な準備
乱歩の成功は「時代の波に乗る運があった」と言えますが、その幸運を確実に掴みとれたのは、彼が長年の転職や放浪を通じて「独自の感性や引き出し」をすでに蓄積していたからです。
私たちビジネスパーソンにとっても、「時代の波」がいつ来るかを完全に予測することはできません。しかし、いつ波が来ても乗りこなせるよう、日頃から自身の専門性や多様な経験という「武器」を磨き上げておくことは可能です。
社会の変化を鋭く観察しながら、圧倒的な準備をしてその時を待つことこそが、真のチャンスを掴む条件と言えるでしょう。
※本稿は、『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。







