麦を収穫している風景Photo:Peter Gercke/gettyimages

 中東での戦争によるエネルギーショックが、欧州経済に厳しい打撃を与えようとしている。欧州大陸全体で有権者の怒りを買った長期の停滞を経て今年は成長加速を期待していた地域にとって、これは皮肉な展開だ。

 政策立案者たちは救済策を講じようと奔走しているが、4年前のロシアによるウクライナ侵攻時に比べ選択肢は限られている。当時は政府債務や借り入れコストが現在よりも低く、欧州の家計や企業には新型コロナウイルス禍での景気刺激策による資金があった。

 現在、借り入れコストは欧州大陸全体で急上昇しており、英国とフランスの政府債務は対国内総生産(GDP)比が少なくとも過去60年間で最高水準か、それに近い水準にある。

 フランス銀行(中央銀行)のフランソワ・ビルロワドガロー総裁は11日、放送局RTLに「これ以上の資金はもうない」と語った。

 エネルギーコストの上昇は、化学メーカーなどエネルギー集約型産業が工場を閉鎖し、生産を中国や米国に移すことで、産業の空洞化を加速させる恐れがある。

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は11日、紛争開始当初10日間での石油・天然ガス価格の上昇により、欧州の納税者は化石燃料の輸入ですでに30億ユーロ(約5470億円)の追加負担を強いられたと述べた。

 ドイツ西部に本拠を置く農業機械メーカーCLAAS(クラース)の工場長ゲアハルト・フライターク氏は「われわれが目にしている最初の具体的な影響は物流面だ。輸送コストが上昇している」と話した。同社はエネルギー契約をヘッジしているため、価格上昇の影響は遅れて現れるという。2022年のエネルギー危機後、主力工場では一部の工程の温度を下げたりLED照明を導入したりして、エネルギーコスト削減策を講じている。

 CLAASのヤンヘンドリック・モーア最高経営責任者(CEO)は、より大きな懸念は農家への圧力の高まりだと述べた。イランとの紛争を受けてディーゼル燃料や肥料など投入コストが上昇し、すでに厳しくなっている利幅をさらに圧迫している。同氏は「農家の収益性がこのように圧迫されれば、最終的に食品価格を押し上げる可能性がある」と語った。

 ドイツ東部では、化学メーカーSKWピーステリッツの広報担当者が「状況は緊迫しており、緊迫したままだ」と述べた。