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欧州連合(EU)首脳は2月の非公式会合で、規制簡素化や単一市場の障壁削減、戦略産業強化など7項目の方向性を共有した。だが、通商政策、金融統合、EU共通債を巡っては加盟国間の利害対立がなお重い。3月の欧州理事会で工程表は示されても、米中との競争力格差を一気に縮める決定打となるかは見通せない。(ニッセイ基礎研究所経済研究部常務理事 伊藤さゆり)
合意できたことより
できなかったことの中身が重要
2月12日、欧州連合(EU)首脳らの姿は、ベルギーの首都ブリュセルではなく、東部のアルデンビーゼンにあった。同日開催されたのはリトリートと称する非公式の会合だ。
3月に予定する公式の首脳会議(欧州理事会)を前に、EUが形成する単一市場の強化、対外的な依存度の低減、競争力の強化策、地政学的な環境への対応策についてブレーンストーミングを行うことが目的だった。
会合にはEU加盟27カ国首脳のほか、2024年9月にEUの競争力強化策についての提言(通称「ドラギ・レポート」)をまとめたマリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁と、同年4月に単一市場の強化策の提言(「レッタ・レポート」)をまとめたエンリコ・レッタ元イタリア首相もゲストとして参加した。
欧州理事会のコスタ常任議長は、会合後の記者会見で3月の欧州理事会に向けた方向性が共有されたとして、(1)オムニバスの推進による規制の簡素化、(2)単一市場内の障壁の削減、(3)企業合併規則の見直し、(4)電力価格問題への対応、(5)戦略産業の強化、(6)開かれた野心的で現実的な通商政策、(7)金融システムの統合の強化―の7項目を挙げた。
果たして、こうした方向性が、米中との競争力格差拡大に歯止めをかける決定打となるのかを判断することは、EUの政策によほど精通していなければ難しいだろう。
EUの政策を理解するうえで重要なのは、合意できたことそのものより、なお合意できていないことに目を向けることだ。
次ページでは、この7項目の実像を点検していく。







