2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』が刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の内容をもとに、抜粋・再構成して特別公開する。

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やる気に満ちた新人からの退職願

 相手に何も言わないまま、めんどくさいから、逆上されそうだから放置するというのは、すごくもったいないことです。

 ある職場で、新卒で元気な社員がみるみる職場に失望し、いきなり辞めてしまったことがありました。

 その新人は研修のときから「私が私が」と自己主張強め。念願だった部署に配属され、やる気に満ちていました。

 しかし新卒の方にとっては花形の部署に見えていたのですが、蓋を開けてみると、意外に地味な作業が多いことがわかったのです。

 社会人経験のある方なら心得ていらっしゃると思うのですが、仕事って当然、華やかなことばかりではありませんよね。どんな仕事にも地道な作業があり、表に出てこない役割もたくさんある。

 ですが、その新人は、地味すぎてその日常が耐えられなかったのです。ついには「せっかくこの会社に入ったのにこんな仕事なんて」と言って、退職願を出しました。

本当に「仕方がなかった」のか?

 こういうときって、相手は決意して言ってくるわけだから、何を言っても無駄だな、と思ってしまうのもわかります。でも、それこそが「決めつけ」です。

 冷静に考えると、彼女はまだ新卒で、仕事への解像度が低いまま不満を表明することもできず、一方的に会社を見切ってしまったんですね。

 この場合、上司はネガティブなことも含めてフィードバックをしなければいけませんでした。でもしなかった。

 いかなる場合でも上司が必ずやらなければいけないのは、部下にきちんと職務を説明することです。なんとなく当たり障りなくその場を収めるのは、組織のためになりません。

 マネージャーの業務として課業の詳細や責任の範囲、成果のイメージやキャリアパスの説明をする。どういうところに成長実感がありそうかを、本人に尋ねるのです。

いきなり「アウト」宣言は誰の利益にもならない

 相手に何も言わないまま、めんどくさいから、逆上されそうだから放置するというのは、すごくもったいないことです。

 彼女は未熟なゆえに、視野が狭窄している。誰にでも起こること。

 それなら、上司がが怒りや苛立ちに発展するずっと前の「違和感」の段階で、指摘したほうがよっぽどマシなのです。

 決別してしまう前に「ちょっと議事録とるの不満そうだな」や「資料作る手が進んでなさそうだな」といった違和感のタネはあったはずです。それを観察して、

「あれ、なんかめっちゃダルそうじゃん(笑)」

 などと水を向ければ、最悪の事態にはならなかったかもしれません。彼女だって、

「いや、私も人事に言われて意気揚々と入ったのに、英語も使えないしこんな地味な作業ばっかりで少し悲しくなってしまって……他の部署の同期がまぶしく見えて不安でした」

 とか、話ができたかもしれない。

 具体的な業務のすり合わせがないまま感情論のぶつけ合いで終わってしまうのが、どれほどもったいないことか。

「最近の若い人はメンタルが弱い」と嘆いていても何にもなりません。もっと普通に言えばいいし、尋ねればいいのです。