Illustration: Daniel Hertzberg for WSJ
衛星利用測位システム(GPS)の信号が受信できないGPS「空白地帯」が、世界中に広がっている。
国家も個人も、安価ながら高度化しつつある電子戦システムを配備している。ほとんどの場合、ドローンや精密誘導弾による攻撃を阻止することが目的だ。妨害装置――上空約1万9000キロメートルの軌道上にある人工衛星から送られてきた比較的弱いGPS信号をかき消す装置――の中には、携帯電話ほどの大きさで、価格が100ドル(約1万6000円)を切るものもある。
ロシアとウクライナの国境沿いではGPS妨害が当たり前になっていたが、今は世界の石油供給量の2割が通過するホルムズ海峡がこうした電子攻撃にさらされている。
海事情報会社ウィンドワードのアミ・ダニエル最高経営責任者(CEO)によると、米国とイランの新たな戦争によってホルムズ海峡は航行が危険な水域になっており、「GPS妨害」はその危険を生み出している多くの要因の一つだ。
北欧では、空港付近でGPS信号が妨害され、航空機が引き返したことがある。あるケースでは、欧州委員会の委員長を乗せた航空機が別の飛行場への行き先変更を余儀なくされた。米議会に提出された書面による証言によると、ウクライナの広い地域でロシアがGPS妨害を開始した後、米国製の衛星誘導兵器の到達率が70%から6%に低下した。ロシアなどはGPSのなりすましも行っており、偽の信号を流して受信機を混乱させている。
古き良きGPS――宇宙開発競争の最中に米国が構築したシステムで、信号が微弱なためどのような機器であれ感知できるのは奇跡だ――は老朽化しつつある。
金融・通信システムや商用航空などの極めて重要なサービスを提供する多くの企業は、GPSに代わる適切な技術を求めている。エンジニアは何年も前から技術開発に取り組んでおり、中には数十年前から開発が行われているものもある。既に実用化したものや、大規模な商用化を目前に控えた技術もある。
ミサイル誘導の小型化
米国が地球全体をカバーするGPS衛星31基の運用を開始するよりずっと前に、国防総省は弾道ミサイルが必ず標的を発見できるようにする方法を必要としていた。エンジニアが目を向けたのが、初期のロケットに搭載されていた慣性航法システムだった。
慣性航法システムは、ジャイロスコープを使ってあらゆる方向の加速度を計測し、コンピューターで速度の変化を積分する。地図上の出発地点を把握し、風などの変数を計算に入れさえすれば、高い精度で現在地を特定できる。
最新のシステムでは、物理的なジャイロスコープの代わりに光学式ジャイロスコープが採用されている。最新システムはGPSのように妨害されることはないが、最も精度が高いシステムは価格が数百万ドルに上るため、顧客はほとんどが軍か、船舶や航空機の運航会社だ。
米アネロ・フォトニクスのマリオ・パニッキアCEOは、かさばって高価な慣性航法システムを、携帯電話の中に収まるほど小型で安価なマイクロチップにしたいと考えている。
同社は光ファイバーとレーザーを、半導体チップを採用した光電子回路に置き換えることで、慣性航法システムをかつてないほど小型化することに成功した。同社の最新世代のシステムは、一辺が1インチ(約2.5センチメートル)の立方体で、電力をほとんど消費しないためドローンに使用できる。







