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ジェフリー・エプスタイン元被告の電子メールの署名に記された免責事項は、警告であると同時に挑発でもあった。このメッセージの内容は「インサイダー情報に該当する可能性がある」というものだ。
元被告にとって、社交と証券法の境界線は曖昧だっただけでなく、その曖昧さ自体が彼のビジネスのやり方の一部だった。米司法省が公開した元被告に関する文書は、この性犯罪者が、広い人脈を持つ協力者たちからいかに容易に機密情報を収集していたかを示している。
元被告は、イスラエルのエフド・バラク元首相が会長を務めるテック系スタートアップの取締役会議事録を同氏から受け取っていた。米金融大手JP モルガン・チェース の元幹部、ジェス・ステイリー氏は、同行が秘密裏に進めていたM&A(合併・買収)案件の詳細を元被告に電子メールで送っていた。米マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツ氏の主要顧問は、同氏が出資しているバイオテック系スタートアップに関する情報を元被告に伝えていた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が同文書を調査したところによると、元被告は、人脈から得た情報を自身の投資に利用することもあった(協力者や企業がそのことを知っていたかどうかにかかわらず)。一方で、元被告が、収集した情報に基づいて行動したという公的記録がないケースもある。これらの情報の一部は、富豪やヘッジファンドなどの投資会社とのつながりを持つ富裕層として元被告のもとに届いたものだ。
バラク氏の代理人はWSJに対し、元被告はパートナーシップの投資家であり、同スタートアップに関する情報を受け取る権利があったと述べた。ゲイツ氏の顧問ボリス・ニコリッチ氏は、自身が提供したのは公開情報か、提供を許可された資料だったと述べた。ステイリー氏と同氏の弁護士はコメント要請に応じなかった。
エプスタイン文書では、元被告の協力者たちが財務情報以外の非公開資料をいかに積極的に提供していたかも浮き彫りとなった。アンドルー・マウントバッテンウィンザー氏(アンドルー元王子)は、英国政府の機密報告書を元被告に提供した可能性について 捜査を受けている 。英国の元外交官ピーター・マンデルソン氏も同様だ。
アンドルー元王子は、元被告との取引に関する不正行為を否定している。マンデルソン氏はこれまでに、元被告との関係を後悔していると述べている。両氏ともコメント要請に応じなかった。
元被告の資産の大半はトレーディング以外の手段で築かれたものだった。主な源泉は、米投資会社アポロ・グローバル・マネジメントの共同創業者レオン・ブラック氏や、女性用下着を手掛ける米ビクトリアズ・シークレットを率いていたレス・ウェクスナー氏といった富豪への助言サービスだった。元被告の死後に裁判所に提出された文書によると、元被告の遺産は、私有島や不動産を含め、少なくとも5億7700万ドル(現在のレートで約920億円)の価値があった。元被告は2019年に性的人身売買の罪で起訴され、勾留中に死亡した。
科学者
ゲイツ氏の科学顧問を長年務めていたニコリッチ氏は2012年後半、ゲイツ氏が分子診断検査を手掛ける米ファウンデーション・メディシンに多額の出資をした頃、同社についてエプスタイン元被告に電子メールを送った。
医師であり投資家でもあるニコリッチ氏は当時、ゲイツ氏のヘルスケア企業やバイオテック企業への数千万ドルの出資について助言していた。これは、ニコリッチ氏の業務に詳しい関係者らの話と、同氏が後に投資家に提供した文書に対するWSJの調査で明らかになった。







