米EV市場の未来を手中に 断言する中国テック界の英雄Photo:China News Service/gettyimages

【寧徳(中国)】巨大な電池セルのような形をした本社ビルの中で、中国電池メーカーの寧徳時代新能源科技(コンテンポラリー・アンペレックス・テクノロジー、CATL)を経営する曽毓群(ロビン・ゼン)氏は、米国人が最終的に頼ってくると確信している。

 米政府はここ数年間、中国富豪番付4位の同氏を完全に無視してきた。米政府にとってCATLは地政学上の脅威であり、関税や国家安全保障上の規制によって退けるべき対象だ。

 それでもCATLは技術力と低コストを武器に、車載電池の世界最大手へと上り詰めた。昨年は100億ドル(約1兆5900億円)を超える過去最高益を記録し、世界中で販売される電気自動車(EV)の推定3台に1台が同社の電池を搭載している。

 この数字には米国市場は含まれていない。EV普及で中国や欧州に後れを取る米国では、CATLの存在感は大きくない。曽氏はこの状況を一時的なものとみている。20日に58歳になった曽氏はインタビューで、米国のEV市場は「今後数年間は」小規模にとどまるが、「その後、トレンドに沿って必然的にブームになる。それが未来だ」と述べた。その未来をCATLなしで実現するのは「困難であり、あまりにコストが高い」。

 米国のEVが冬の時代にあるとはいえ、実際にそうなる証拠はある。

 米フォード・モーターは最近、電池事業の合弁パートナーだった韓国のSKグループとの関係を解消し、30億ドルを投じるミシガン州の工場でCATLが設計した電池を製造する計画に切り替えた。フォードはCATLの知的財産(IP)にライセンス料を支払っている。米国はCATLの自社工場建設を防ぐための法的・政治的な障壁を設ける一方で、こうした回避策を認めている。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)は、CATLから中国製の車載電池を輸入し、新型EV「シボレー・ボルト」に搭載する予定だ。60%の関税を受け入れる必要はあるが、これも合法だ。同車のモデル年式はわずか1年で、より長期の計画を立てることにしている。一方で、GMが総工費数十億ドルをかけた二つの米国電池工場は稼働しておらず、3万ドルのEVを製造するのに必要な安価な電池を製造できずにいる。

 米テスラは、CATLの技術を利用し、ネバダ州の電池工場でエネルギー貯蔵システムを製造している。テスラの主力であるEV事業が停滞する中、同事業は順調に伸びている。