AIの活用が広がるなかで、「AIを使えば仕事が早くなる」「成長も加速する」と考える人は少なくありません。しかしその一方で、AIに頼るほど、キャリアやスキルの成長が止まってしまうケースも出てきています。AIが考えてくれる便利さの裏で、「自分で考える経験」が減り、気づかないうちに成長機会を失ってしまうのです。
では、AIを使って伸びる人と、逆にキャリアが詰んでしまう人の違いはどこにあるのでしょうか。そこで本記事では、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなどを含む600社以上、のべ2万人以上に思考・発想の研修を行い、そのノウハウをAIで誰でも実践できる方法を書籍『AIを使って考えるための全技術』としてまとめた石井力重さんに、成長を加速させるAI活用のポイントについて聞きました。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

AIを使って「キャリアが詰む人」と「成長できる人」の決定的な違いPhoto: Adobe Stock

AIを使うほど「キャリアが詰む人」の共通点

――どんな使い方をしていると、「キャリア」や「スキル」が詰んでしまうのでしょうか。

 もっとも危険なのは、「学習の外注化」です。

 AIに答えを出させ続け、自分は理解しないまま仕事を進める。この状態を続けると、経験が“蓄積”になりません。

 もし5年目になったとき、新入社員と変わらない深さのアウトプットしか出せなかったら……。そう考えると、かなり危険な状況です。

 新人のうちは、AIで作った企画書でも、自分で考えた企画書でも、上司が赤入れしてくれます。これは新人の特権です。

 この貴重な期間に自分の頭を鍛えなければ、後から取り戻すことはできません。

 このプロセスをAIでショートカットすることは、その特権を放棄するようなものです。

 AIで効率化できるからこそ、あえて考えるプロセスを手放さないことが重要なのです。

「それっぽい文章」を量産する人ほど危ない

 もうひとつ危険なのが、検証しない習慣です。

 AIはもっともらしい文章を生成しますが、現場や顧客の実態と接続されていない内容も少なくありません。そのため抽象的な段階では成立していても、具体化すると誤りが出てきます。

 しかし、実際に商品やサービスを世に出すには、超具体まで落とし込む必要があります。その段階でまとめて検証しようとしても、ほぼ不可能です。

 よってAIの出力のうち、自分が正誤を判断できない部分は、すべて検証する必要があります。

 新人のうちは、一文ごとに検証が必要になることもあるでしょう。ここを省略してスピードだけを追うと、「生煮え」の成果物が積み上がります。

 さらに危険なのは、AI文章は一見整っているため、人間のチェックを通ってしまうことがある点です。

 後から問題が発覚すると、修正や挽回には倍以上の労力がかかります。

 こうした“時限爆弾”を積み重ねると、「危なくて任せられない人材」と判断され、成長の機会そのものを失ってしまいます。

「伸びる若手」と「伸びない若手」の決定的な違い

 伸びない若手は、AIを“代役”として使い、自分で考えなくなります。
 
ふわっと質問し、ふわっとした回答に満足し、こなし仕事になっていきます。

 一方、AIを使って伸びる若手は、AIを“壁打ち相手”として使います。
 状況や制約、関係者、目的などを具体的に入力し、出力を鵜呑みにせず、一緒に考え、判断は自分で行います。

 よってAI時代に求められるのは、プロンプトの知識ではなく、「知的営みをAIにもわかるように整理する力」です。

 つまり、仕事やタスクを分解し、何ができればよいかを定義する力。そしてAIの限界を知るために、あえて試して失敗から学ぶ姿勢も必要です。

 AI時代は、思考を外注する時代ではありません。

 AIを使って、自分の思考をどれだけ鍛えられるか。

 うまく使えば、これまで以上に早く成長できる時代になったわけです。

(本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』著者、石井力重さんの書き下ろし記事です。書籍ではAIを使って思考の質を高める56の方法を紹介しています)

本書が提案したいのは「AIを使って考える」ことであり、「AIに考えてもらう」ことではありません。
――『AIを使って考えるための全技術』P17より引用