英語を勉強しているが、英会話の上達を実感できない――そんな人に試してほしい1冊が『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』だ。「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、日本語を介さず瞬時に答える「英語の反射神経」を鍛えることができる。本稿では、著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に「英語を話せるようになるための学習のポイント」を教えてもらった。
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「覚えただけの英語」は忘れるが、「体験した英語」は残る
よく「自分は暗記が苦手だ」とか「単語帳を見てもすぐに忘れてしまう」と嘆く声を聞きます。
記憶力には、情報を入れる「覚える力」、それを「保つ力」、そして必要な時に「思い出す力」の3つがあると言われていますが、どれも自信がない……という人も多いのではないでしょうか。
私が初めてオーストラリアでホームステイをした時のことです。朝食のテーブルに出されたのは、真っ黒なペーストが塗られたトースト。そう、あの独特な香りで有名な「ベジマイト(Vegemite)」です。
正直に言って、当時の私の口には全く合いませんでした。独特の匂い。でも、目の前にはニコニコとこちらを見つめるホストファミリー。「おいしい?」と聞かれた私は、反射的にこう答えてしまいました。
It's delicious.
それから滞在中、私の前には毎朝ベジマイトが並ぶことになります。そして別れの日、空港で見送ってくれた彼らが「君の大好物だよ!」と手渡してくれたのは、大きなベジマイトの瓶でした。
申し訳なさと、彼らの真っ直ぐな優しさが胸に込み上げてきたあの瞬間。あの時の「It's delicious.」というフレーズは、数十年経った今でも、ベジマイトの香りと共に私の脳に鮮明に焼き付いています。
なぜ「一生モノの記憶」になったのか?
なぜ単語帳の例文は忘れるのに、この言葉は忘れないのでしょうか? そこには、記憶を長期保存に変える「3つの秘密」が隠れています。
①五感の刺激
教科書の文字だけでなく、あの独特な「匂い」やトーストの「食感」、ホストファミリーの「笑顔」がセットになって脳を刺激したからです。
➁自分事にする(自己との関連性)
誰かが書いた例文ではなく、その時の自分が、その場を切り抜けるために発した「自分の言葉」だったからです。
➂感情の揺さぶり
「本当は嫌いなのに」という気持ちや、空港での「別れの場面」での思い出。この心の動きが、脳の記憶スイッチを強力にオンにしました。
英語は「勉強」ではなく「体験」
通りすがりに聞いた会話は、数十秒で消えてしまう「短期記憶」に過ぎません。でも、感情や感覚が伴った記憶は、何年もしっかり留まり続ける「長期記憶」になります。
英語をただの「記号」として暗記しようとするのは、もったいないことです。たとえ日本にいても、好きな音楽を聴いて心が動いた時や、勇気を出して誰かに英語で話しかけた時の達成感は、あなたの脳にとって最高のご馳走になります。
暗記が苦手だとため息をつく前に、まずはその言葉に「自分の感情」や「自分の体験」を込めて発してください。あなたの脳は、あなたが思っている以上に、出来事を覚えるのが得意なのです。英語は体験をしながら、たどたどしい英語でも話すことでしか身につかないのです。
「受験には5000語も必要なんだよ!」というため息が聞こえてきそうです。確かに、膨大な単語や熟語を覚えるのは大変な苦労ですよね。
5000語を「使う」ことで記憶に「刻む」ことが大切です。ただ眺めるだけでは、新しい記憶にどんどん上書きされてしまいます。だからこそ、「使うこと」が最強の復習になります。
英単語の記憶を一生モノに変えるヒントは次の3つです。
①声に出す。自分の五感に刺激を加える。
➁場面を想像する。「自分ならどんな時にこの言葉を使うか?」と自分との関連性を考えて口にしたり、書いたりする。
➂感情を乗せる。驚き、喜び、時には怒り。感情を込めて口にしてみる。
こうして「五感」「自分事」「感情」をセットにして言葉に触れることで、英語は単なる暗記ではなく、「忘れにくい体験」へと変わっていきます。








