将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつは意外な習慣によって、そのリスクを高めてしまうことがわかった。その影響は20代から始まっているとも言う。
その事実を紹介したのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏の著書『糖毒脳ーーいつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』だ。認知機能を崩壊させる「黒幕」の正体や、そのメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介した同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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「認知症」は突然始まるわけではない
認知症というと、多くの人は「年を取ってから起こるもの」と考えがちだ。
しかし実際には、その背景にはもっと前から現れている“兆候”がある。
物忘れが増える。
感情のコントロールが難しくなる。
言葉が出にくくなる。
こうした変化は、単なる老化ではなく、脳そのものに起きている異変のサインかもしれない。
元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は、著書『糖毒脳』で、認知症を引き起こす主な原因についてこう説明している。
認知症を引き起こす病気としては、主に次の4つが挙げられます。
①アルツハイマー病
②脳血管性認知症
③前頭側頭型認知症
④レビー小体型認知症
――『糖毒脳』より引用
つまり、認知症はひとつの病気ではない。
脳の異なる異常によって引き起こされた「状態」を指している。
多くの人が密かに抱えている「意外な原因」
認知症は、主にこれら4つの病気を原因として現れる症状の総称だ。
そのなかでも、最も多くの割合を占めるのがアルツハイマー病である。
そして、その研究の過程で、ある意外な事実がわかったと言う。
アルツハイマー病に関する研究は非常に盛んに行われ、現在では発症メカニズムが詳細に解明されつつあります。
その中で判明したのが、アルツハイマー病と「遺伝子」の関係です。
――『糖毒脳』より引用
ここで怖いのは、特別な人だけの話ではないということだ。
じつは私たちの多くが、生まれながらにしてアルツハイマー病のリスクを抱えている可能性があります。
その背景には、ある遺伝子の存在があります。日本人でも、この遺伝子を持っている人は決して少なくありません。
――『糖毒脳』より引用
認知症になりやすい人が密かに抱えている「恐ろしい原因」。
それは、自分では気づけない“遺伝子”の存在だ。
それは運命ではなく、「習慣」によって回避できる
ただし、ここで誤解してはいけない。
遺伝子があるから、必ず発症するわけではない。
同書では、こう解説されている。
晩発型アルツハイマー病の場合、問題の遺伝子単独で病気を引き起こすというよりも、不健康な生活習慣や環境といった他の因子が加わることで、発症しやすくなると考えられています。
――『糖毒脳』より引用
つまり、遺伝子は「運命」ではない。
睡眠。
食事。
運動。
血糖コントロール。
こうした日々の積み重ねが、発症を遠ざけることもある。
認知症の本当に怖いところは、静かに進み、発症したら後戻りできないことだ。
だからこそ、「まだ大丈夫」と思っている今こそが、最も大切なタイミングなのかもしれない。
(本稿は、『糖毒脳ーーいつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








