フットボールアワー後藤輝基 Photo:SANKEI
会話には「量・質・関連性・様態」という4つの基本ルールがある。普通なら守るべきこのルールだが、実はあえて破ることで印象に残る会話が生まれるという。なぜ叶姉妹の発言はミステリアスに聞こえ、フットボールアワー後藤輝基のツッコミは笑いを生むのか。言語学の視点から、人を惹きつけるトークの仕組みを解き明かす。※本稿は、編集者の水野太貴『会話の0.2秒を言語学する』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
当たり前すぎて気づかない
会話の4つのルール
イギリスの哲学者ポール・グライスは、協調の原理は4つの公理からなるとした。とりあえず次に列挙するが、「公理」という語になじみがなければ「ルール」と考えてもらってOKだ。
1.量の公理…必要とされるだけの十分な情報を与えよ。また、必要以上の情報を与えるな。
2.質の公理…間違っていると思うことや、十分な証拠がないことを言うな。
3.関連性の公理…相手の発話と関連性のあることを言え。
4.様態の公理…不明瞭な表現や曖昧な表現、冗長な表現を避け、順序だった言いかたをせよ。
なんだかマナー講師のようだ。しかしグライスの意図はマナー違反をあげつらうことではなく、実際の会話が上記のきまりに沿って行なわれていることを示したにすぎないという点に注意してほしい。
僕は大学2年生のとき、言語学概論の講義でこれを習った。そのときのことは今でもよく覚えている。「当たり前じゃね?」と思って拍子抜けしたからだ。わざわざ会話で思ってもないことを言う人はいないし、突然無関係なことを口走る人もいない。なぜこれが教科書に載っているのか、さっぱりわからなかった。
ところが勉強してみると、グライスが本当に言いたかったことが徐々に理解できた。人は思いのほか、この公理を破って発話しているのだ。







