だからこそ、今からでもあなたが「聞き出す力」を身につける価値は十分にあると私は考えています。

ビジネスにおける「聞く力」は
ただ座って話を聞くことではない

「先生のお話をちゃんと聞きましょう」

 あなたが小学生だった頃をふりかえると、一度はこんなふうに言われた経験があるのではないでしょうか。

 当時を思い出してみてください。その時の「聞く」は、どんな「聞く」でしたか?

 余計なことをしゃべらずに、大人しく座って、先生の話を聞く。つまりは、受け身の「聞く」だったのではないでしょうか?

 今あらためて考えてみると、その時の「ちゃんと聞く」は、単なるマナーや礼儀の範疇だったのではないかと思います。

 一方で、ビジネスにおける「聞く」は、この受け身の「聞く」とは似て非なるものだと私は思います。

 大事な会議の場で、隣の人とぺちゃくちゃおしゃべりをしてクライアントの発言を聞いていない人は、見たことがありません。

 ビジネスで求められる「聞く」とは、単に相手の言葉を額面通りに頭に入れることではなく、「なぜ相手はそんな発言をしたのか」「その言葉の裏側にある真意とは何か」など、自ら能動的に相手の頭の中にある本音や思いを掘り起こしていくための「聞く」です。

 他者の言葉に耳を傾け、相手がまだ言葉にできていないものを引き出す、静かな攻めのスキルと捉えることもできるのではないでしょうか。

 クライアントやチームメンバーが抱える悩みや本質的なニーズを掘り起こし、言葉に変換するための手段であり、すべての仕事の始まりでもある――それがビジネスにおける「聞く」と言えるでしょう。

 本稿では「聞く」を受け身ではなく、一歩深く踏み込んだ攻めのスキルとして、「聞き出す力」と定義していきます。

 そもそも、私たちは「聞き出す」以前に「聞く」についても、じつはきちんと教わらないまま社会人になっている人がほとんどです。

『聞き出せる人が、うまくいく。』書影聞き出せる人が、うまくいく。』(荒木俊哉、祥伝社)

 かつて「読み・書き・そろばん」と言われていた時代もありました。さすがにそろばんに力を入れている授業は最近少ないと思いますが、「読み・書き」は今でも基本的な力として学校の授業でも丁寧に扱われています。

 読み・書きは教わる。でも、聞き方はほとんど教わらない。先述したように聞く姿勢や聞く態度は教わっても、スキルとしての「聞き方」を深く学べる時間は、学校のなかにはありません。

 相手の話に耳を傾けるのはもちろん、その奥にある本音や思いまでそっと引っ張り出してくる。

 そんな「聞き出す力」を意識的に身につけることは、他の人がきちんと教わっていない分だけ、あなたの強みになるはずです。