「言語化にモヤモヤする」
「即答よりじっくり考えるほうが大事」
「口下手のままでもいいじゃない」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「言語化がすべて」と語る人
最近は、「言語化能力」が重要だと言われる時代です。
自分の考えを整理する。わかりやすく説明する。誤解なく伝える。
たしかに、それは大事なスキルでしょう。
ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、「言語化だけではどうにもならない場面がある」と語られています。そして、多くの人が見落としているのは、「相手との共通理解」です。
「コレ」で通じる相手
本書では、まずこんな話が出てきます。
「それを見て思ったり考えたりしたこと」をいきなり話すことができるからです。
単に「あれ面白かった」と言うだけで伝わります。
でも、相手がそれを知らなかったら、どういう内容かを伝えないといけません。
「あれというのは、こういうことで……」と長々と内容を説明して、2人の距離感は縮まらないまま、会話は途切れてしまいます。切ないです。
距離感の遠い相手には、自分の思っていることを伝えるまでに時間がかかるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは非常にリアルです。仲の良い友人には、「アレ見た?」だけで通じる。
でも、前提知識が共有されていない相手には、ゼロから説明しなければならない。
つまり、コミュニケーションの難しさは、「言葉の上手さ」だけで決まるわけではないのです。
言語化しても「ふーん」
本書では、さらにこう続きます。
でも、「相手との距離感によって伝える難しさが変わる」ということはあまり語られていないような気がします。
たとえ語彙力を身につけて、自分の考えを正確に言葉にできたと思えても、「コレ」や「アレ」を共有していなければ、相手からの反応は、「ふーん(知らんけど)」になってしまうのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、かなり鋭い指摘です。
最近は、「説明がうまい人」が高く評価されがちです。
ですが実際には、どれだけ丁寧に話しても、相手が前提を共有していなければ、反応は薄くなります。
なぜなら、人は「理解したこと」に反応するのではなく、「自分ごととして感じられたこと」に反応するからです。つまり、「伝える力」以前に、「共通理解」が必要なのです。
人との距離は「共有しているもの」で決まる
本書では、最後にこう整理されています。
共通理解がどれだけあるかによって、人との距離感は変わります。
そして、伝えるときの難易度も変わる、ということです。
仕事の話を学生時代の友人や久しぶりに会った家族に伝えるのは難しいものです。
守秘義務もあるかもしれませんが、仕事について何も共有していないため、どこから話していいかがわからないのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは本当にその通りです。
毎日同じ仕事をしている同僚には、一言で通じる。
でも、仕事を知らない相手には、「そもそも何をしている会社なのか」から説明しなければならない。
つまり、人間関係の近さとは、「どれだけ多くの前提を共有しているか」でもあるのです。
「話し方」だけで距離は縮まらない
最近は、「もっと言語化しよう」というメッセージが溢れています。
ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』では、「言葉だけでは埋まらない距離がある」と教えてくれます。
人は、「説明がうまい人」に心を開くわけではありません。
「同じものを見てきた人」に安心するのです。
だから、本当に大事なのは、「完璧に説明すること」ではないのかもしれません。
まずは、「共有できるものを増やすこと」。
それこそが、人との距離を縮める本質なのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








