「言語化だけがすべてではない」「絵を描くように考えるのが大事」「口下手のままでも伝え方は上手になれる」など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「コミュニケーションの最強奥義は何ですか?」→人気イラストレーターが教える、まさかの方法とは?

コミュニケーションの最強奥義は?

「もっと伝わる話し方を身につけたい」

 そう考えている人は多いでしょう。
 だからこそ最近は、「言語化」がブームになっています

 わかりやすく説明する。
 論理的に話す。
 誤解なく伝える。

 もちろん、それは大事です。

 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、「もっと強力なコミュニケーション方法がある」と語られています。しかも、その方法は驚くほどシンプルです。

言葉が通じない相手に、どう伝えるか

 本書では、まずこんな事例が紹介されています。

まずは、外国語を使う人とのコミュニケーションについて見ていきましょう。
「日本語が通じないかもしれない相手」に、どのようにものを伝えたらいいでしょうか。
日本語教育学を専門とする岩田一成が『やさしい日本語ってなんだろう』で紹介していた事例を見てみましょう。
ある電車内。車掌さんがアジア系の人らしき乗客に話しかけています。
「乗車券を拝見します」
聞かれた乗客は、何を聞かれているかわからず、戸惑っているという状況です。
みなさんなら、どのように手助けするでしょうか?
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 たしかに、「乗車券」「拝見」という言葉は、日本人でも少し硬く感じます。
 相手が日本語に不慣れなら、なおさら伝わりにくいでしょう。

「わかりやすい言葉」に変える

 本書では、こんな方法が紹介されています。

岩田一成が紹介していた方法は、自分の切符か電子マネーのカードを見せながら、「『切符はありますか?』と言い換えて聞く」というものでした。
外国人だから英語が伝わるはず、というのは思い込みです。
日本にいる場合、日本語を勉強している可能性もあります。
だから「乗車券」という耳慣れない言葉ではなく、「切符」という聞きなじみのありそうな言葉に置き換えると伝わりやすくなる、ということでした。
「拝見」も難しいので、「ある」というわかりやすい言葉に置き換えています。
単語をわかりやすく置き換えるだけで、伝わる可能性は高くなる、という話です。
このように言葉をわかりやすくすることも、「言語化」のひとつですね。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここまでは、多くの人がイメージする「伝え方の工夫」です。

 難しい言葉を使わない。
 相手に合わせて表現を変える。

 これは非常に大切です。ですが、本書はここで終わりません

最強なのは「実物を見せること」

 本書で本当に面白いのは、このあとです。

ただ、ここで私が注目したいのは、「自分の乗車券を見せながら」という部分です。
これこそが、私の考える最適なコミュニケーションの取り方なのです。
言葉が通じない人とは、どうしても距離感を遠く感じます。
「コレ」と言いながら実物を差し出すのは、そんな距離の遠さを一気に消し去る最強のコミュニケーションです。
正確な表現をあれこれ探すよりも、圧倒的に素早く正確に伝わります。
「コレです」と実物を指さすだけで、「ああ、ソレね」とわかってもらえるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、かなり本質的です。
 つまり、人間のコミュニケーションは、「言葉」だけで成立しているわけではないのです。

 実物。表情。動き。視線。そうした「共有できるもの」があるだけで、人との距離は一気に縮まります

「説明力」より「共有力」

 最近は、「ちゃんと言語化しよう」が合言葉のようになっています。
 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』では、「人は言葉だけで理解し合っているわけではない」と教えてくれます。

 むしろ、本当に大事なのは、「同じものを見ること」なのかもしれません

 長い説明より、「コレ」と実物を見せる。
 抽象論より、一緒に体験する。そのほうが、ずっと早く伝わることがあります。

 コミュニケーションの最強奥義とは、「うまく話すこと」ではない。
「共有できるものをつくること」なのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。