「言語化だけがすべてではない」「絵を描くように考えるのが大事」「口下手のままでも伝え方は上手になれる」など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「異性にフラれまくる人」が気づいていないこと・ベスト1

異性にフラれまくる人

「ちゃんと言ってくれればよかったのに……」

 恋愛でフラれたあと、そう感じたことがある人は多いかもしれません。

 急に態度が冷たくなった。
 なんとなく距離を感じていた。
 でも、別れ話になるまでは「そこまで不満がある」とは思わなかった

 そんな経験です。

 しかし、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、「言葉にしていなかった側」だけを責めるのは違うのではないか、と語られています。

「言葉以外」のメッセージ

 本書では、まずこんな指摘があります。

言葉以外にも相手に何かを伝えられる手段がある。
これが言葉以外のコミュニケーション手段の基本中の基本です。
とはいえ、「体の動きで察してほしい」というコミュニケーションは、受け手からすれば意味を見出すのが難しいときもあります。
付き合っていた相手にフラれた人が「不満があるなら、もっと前に言ってほしかった!」と嘆いているのを見たことがあります。
「言ってくれなきゃわかんないよ」というわけです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 たしかに、「言葉にしないほうが悪い」と感じる気持ちはわかります。

 ですが実際には、人は不満を感じたとき、完全に無反応になるわけではありません

 返信が遅くなる。
 表情が変わる。
 会話の熱量が下がる。

 そうした「小さな変化」として、すでにサインは出ていることが多いのです。

「言ってくれなきゃわからない」は本当か?

 本書では、さらにこう続きます。

でもフった側は実は、不満を察してほしくて動作で示していたはずなのです。
それに、その人は気づかなかった。
これは、雨雲が出ていても雨が降ることに気づけないのと似ています。
「雨が降るって言ってくれなきゃわかんないよ」とスネるようなものです。
言葉にするスキルが求められている背景には、もしかすると、「言ってくれなきゃわかんない」と思っている人が増えているのかもしれません。
でもそれは「ただ単に観察が足りていないだけ」の可能性もあるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これはかなり鋭い話です。
 最近は、「ちゃんと言葉にしよう」が重視される時代です。
 もちろん、それ自体は大切です。
 ですが、その一方で、「言葉にされない限り、何も気づかなくていい」という空気も強くなっています。

 本来、人間関係とは、「空気」や「変化」を感じ取るものでもあります。

 相手の態度が変わった。
 笑顔が減った。
 以前より会話が雑になった。

 そうしたサインを見落とし続けると、ある日突然、「もう無理」と言われることになるのです。

コミュニケーションは「言語化」だけでは成立しない

 本書では、最後にこう整理されています。

では、先ほどのカップルは、どちらが悪かったのでしょうか。
不満を言葉にしないほうが悪かったのか。
不満に気づけなかったほうが悪かったのか。
「言葉にしないのが悪い」と言うなら、「態度に気づけないのも悪い」と言えるのではないでしょうか。
もしかするとこのカップルは、どちらもコミュニケーションにおける大事なスキルが欠けていたのかもしれません。
一方は、「言語化のスキルの不足」。考えたことを言葉にできなかったのです。
もう一方は、「観察のスキルの不足」。目でものを見ようとしなかった。もしくは、目では見えていたのに、メッセージを読み取れなかったのです。
どちらかが欠けていても、コミュニケーションに支障をきたしてしまうのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここが、この本の核心です。
 コミュニケーションとは、「話す力」だけではありません

 相手の変化を観察する力。
 空気を読む力。
 言葉になっていないサインを感じ取る力。

 そうした「観察力」も、同じくらい重要なのです。

 最近は、「言語化能力」が過剰に重視されています。
 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』では、「人は言葉だけで生きているわけではない」と教えてくれます。

 恋愛でも、仕事でも、人は常にサインを出しています。
 そのサインに気づける人ほど、人間関係は壊れにくい。

「言ってくれなかった」が口癖になっている人ほど、実は「観察」が足りていないのかもしれません。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。