累計97万部突破『東大教授がおしえる やばい日本史』シリーズでマンガパートを担当している横山了一先生に、最新作『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』の刊行を記念してインタビューを行った。
前編では、広告マンガの世界について話を聞いた。後編では、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなど、さまざまな特徴を持つプラットフォームの中で試行錯誤を重ねてきた横山先生に、SNSを舞台とする仕事術や発信との向き合い方について聞いた。(構成:田中裕子/写真:山口真由子/企画:ダイヤモンド社書籍編集局)

【必読】『超!やばい日本史』マンガ家が実践する「バズるSNS術」とは

Xは「バズ」の主戦場

――新刊『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』のマンガパートをアップした先生のX、バズっていましたね。

横山了一(以下、横山):ありがとうございます。新刊が出たよということでアップした3回のポストは、いずれもかなりの人に見てもらえました。

【必読】『超!やばい日本史』マンガ家が実践する「バズるSNS術」とは横山了一氏(@yokoyama_bancho)2026年4月21日のXのポストより。2026年5月19日現在で、887リポスト、9953いいね

――内容のおもしろさは当然ながら、バズらせるための工夫はされたのでしょうか?

横山:本の中から一番「引き」のあるコマを1枚切り出して、ドンと最初の投稿に載せたことですね。そのツリーに、本編をぶらさげていく。今のXのセオリーどおりですが、どのコマを1投稿目にするか選ぶのも楽しかったです。

 たとえば今回載せたのは、「まことに~!?」のセリフと白目がインパクト大のコマ、ネット民ならだれもが知っているバナー広告と『東京卍リベンジャーズ』をパロディにしたコマです。

【必読】『超!やばい日本史』マンガ家が実践する「バズるSNS術」とは
【必読】『超!やばい日本史』マンガ家が実践する「バズるSNS術」とはイラスト:横山了一(『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』より)

 SNSのアルゴリズムは変化が多く、発信者は毎度それに右往左往するものです。でも、1投稿目にインパクトのあるコマを置くやり方は、ここ1~2年くらい変わっていません。1コマで読む気になってもらえなければあっという間にスクロールされてしまうSNSの性質を考えると、このセオリーはしばらく変わらないかもしれませんね。

――ほかにバズらせるコツはありますか?

横山:連載ものの場合、気になる展開で終わることです。最後のコマを「どうなるんだろう」「どういうことだろう」と思わせる終わり方にする。次につながる引きをつくるのは、ドラマと同じですね。

 基本的に、連載より1話完結のほうがインプレッションは高い傾向にあるんです。連載を続けるうちにインプレッションは落ちていく。でも連載にすることで、「続きはこちら」と、Xの外のリンクを見てもらうこともできます。どんなマンガを描くかは、目的によって変わってくるわけです。

 ただ、最近はアルゴリズムによるレコメンド表示の影響が強くなっていて、投稿が以前より伸びづらくなってきたと感じています。そもそも自分のフォロワーにも届かないし、初動でレコメンドに乗れないと、その時点で伸びづらくなる感覚があります。

 伸びるときは爆発的に伸びる。でも、伸びないことのほうが多いです。こちらでコントロールできることはほとんどないので、最終的には運の要素が大きいですね。

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――プラットフォームごとの特徴や使い分けを教えていただけますか?

横山Xはマンガに向いていると思います。マンガやアニメを好きなユーザーが多く、画像付きの投稿も拡散されやすい。仕組み上、フォロー外の人にも広がります。

 引用リポスト機能も大きいです。ひとつの投稿が「語り合われる素材」になることで、指数関数的な拡散が起きるんですね。通りすがりで失礼なことを書かれて嫌な思いをすることも結構あるのですが(笑)。とはいえこうした機能のおかげもあってXの宣伝力はほかのSNSと比べて段違いだと思います。

 フォロワー数十万人超のインスタグラマーですら「Xでバズると広まり方が全然違う」と言っていましたし、知り合いのマンガ家も「Xは荒れることもあるけど、手放せない」と言っていました。

インスタ、TikTokは「難しい」?

――インスタはXと比べるとマンガの発信が難しいと聞いたことがあります。

横山:インスタは、投稿の本文に直リンクが貼れないのが不便ですよね。だからストーリーズに貼らざるを得ないわけですが、Xの大バズりに比べるとリーチはだいぶ落ちます。

 ただ、今回『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』の切り抜き投稿はインスタでも反応がかなり大きくて、おどろきました。インスタって「子育て層に刺さるジャンル」とはすごく相性がいいらしく、学習マンガものも読まれるのだとか。

 実は、僕のインスタのフォロワーさんは7割が30~40代の女性。狙ったわけではなく、『どちらかの家庭が崩壊する漫画』を載せてから、女性のフォロワーが増えたんです。

 インスタってキラキラしたプラットフォームに思われがちですが、不穏でドロドロしたテーマが読まれる場でもあります。そこで集まってくれた人たちに、「やばい日本史」も意外とハマったのかもしれません。自分のマンガが「どの層に響くか」を把握したうえで、プラットフォームに出していくのが大事なのかなと思います。

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――ジャンルとユーザー層の相性さえ合えば、インスタでも広がるわけですね。TikTokはいかがでしょうか。

横山:TikTokは一応アップはしているものの、期待はしていません。というのも、TikTokは毎日コンスタントにアップし続けないと伸びづらいので、量産できないマンガには向いていないんです。マンガ家はTikTokで戦うことを目指さないほうがいいんじゃないかな。

 Threadsもテキストのみの投稿が伸びる傾向にあると言われていて、画像コンテンツであるマンガは伸びにくいようです。個人的にはゆるさが好きなプラットフォームだし、たまにXやインスタには吐けない毒を吐いて、ガス抜きしたりもしていますが(笑)。

――SNSマンガの収益化でいえば、Kindleインディーズマンガは稼げる場になっていますか?

横山:Kindleインディーズマンガ(Amazon上で個人でもマンガを販売できるサービス)では、一時期大きな収益をあげていました。AmazonがKindle Unlimitedを広めるための施策として、ダウンロード数に応じてクリエイターにしっかり分配金を出していたんですよ。僕は何十タイトルも持っているので、2年前はまさに「バブル」でした。

 ただ、今は分配金の水準がだいぶ下がっているように感じます。それに今後、AIマンガがKindleに大量に流通することは間違いありません。分母が激増することで、一作品あたりの分配金がさらに減少していく可能性は高いでしょう。

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「再投稿」してもまたバズる

――過去にバズった作品を再投稿することについてはどう思いますか?

横山:マンガ家の中には「フォロワーにしつこいと思われてしまうのではないか」と再投稿に抵抗がある人もいますが、数か月スパンの再投稿はまったく問題ないと思います。一度の投稿でフォロワー全員に届いているわけではありませんし、今のXの「フォロワー外に届けよう」とするアルゴリズムだと、また新たな層との出会いになる可能性のほうが大きいです。

 あと、過去の投稿のリポストより再投稿のほうがずっと効果があるので、手間を惜しまないほうがいいですね。そもそも、一度バズったマンガって、再投稿してもまたバズることが多いんですよ。

――本当におもしろいものは何度でもバズる、ということでしょうか。

横山:完成度が高いというか、自分でもおもしろくできたなというものは再投稿でも伸びていきます。ありがたいことに、『どちらかの家庭が崩壊する漫画』は何度もバズっています。

――細かい話ですが、再投稿の際、文章は毎回変えますか?

横山:そのときの流れや刺さりそうな文言を考え、多少は変えています。最近は、自分の投稿なのに「このとき、彼女が取った行動は……!?」と広告のような煽り文をつける人もいますよね。僕はトライしたことはありませんが、バズっているので効果はあるのでしょう。

 向き不向きはあると言いつつ、僕はほとんどのプラットフォームにをアップしています。載せるのはタダですから、「全然読まれないな」と思いつつも淡々と全部出す。できることをやっていく、という感じですね。

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SNSでの心の守り方

――SNSで発信を続けていると、悪意あるコメントに心を病んだりするリスクもあります。どのように対処していますか?

横山:相手に悪意があると感じるのであれば、戦わないのが一番の対処法だと思います。僕自身、Xのような荒れやすい場所ではだいぶ前からそもそも争いの種をつくらないように気をつけています。自分の主義主張を出したいという人であれば別ですが、そうでなければ、それぞれの人が自身の目的に沿って使うのがいいと思います。僕の場合、「自分のマンガを伝えたい」という目的があるので、そのスタンスを守ることが、心を守ることにつながっています。

 知らない人から攻撃されてしまうと、どんな人でもダメージを受けると思うんです。知人でも炎上しがちな人がいるのですが、SNS上では平然としていても、リアルで会うとやっぱり落ち込んだり傷ついたりしていますよ。自分の心をどう守るかは、SNS時代のクリエイターにとって本当に大切な問題だと思います。

おもしろいものをつくれば、バズは後からついてくる

――横山先生は、広告マンガ、SNSマンガ、電子書籍配信、単行本販売と、さまざまなかたちで作品を展開されています。

横山:そうですね。SNSはアルゴリズム次第で状況が大きく変わりますし、先のことはなかなか読めません。だからこそ、いろいろな形で活動の場を持っておくことは大事だと思っています。

 でも、SNSのおかげでさまざまなチャンスを得ることができました。まだ発表できないのですが、うれしいお仕事も決まっています。

――楽しみです! 最後に、横山先生が長く活躍するために大事にしていることを教えてください。

横山意図的にバズをつくることの限界を感じているからこそ、「おもしろいものをつくり続ける」という原則が大事だと思います。アルゴリズムは変わるし、プラットフォームのルールも変わっていきます。コントロールできないことばかりだからこそ、おもしろいコンテンツをつくるしかない。少なくとも今は、そう考えています。

(本原稿は『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』の刊行を記念した特別インタビューです)

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