イラン戦争でずれ始めたトランプ・ネタニヤフ両氏の利害、米国・イスラエルの「特別な関係」に広がる亀裂7月28日、ホワイトハウスで会談を行った米国のトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相 Photo:Anadolu/gettyimages

イスラエルとの大規模な「共同攻撃」
「支援者」から「共同当事者」へ

 2026年6月中旬に成立した米国とイランの暫定覚書は、7月上旬の攻撃再開によって事実上、崩壊した。その後、米軍はイラン南部の軍事施設や沿岸拠点への攻撃を連日拡大し、イランも米軍基地やホルムズ海峡の船舶への攻撃で応じている。7月下旬になっても、戦闘の収束はみえない。

 2月末の開戦時に、トランプ、ネタニヤフ両氏が期待したとみられる短期決着の構図は、すでに大きく崩れている。

 とりわけ米国にとって、今回のイラン攻撃は、イスラエルの「支援者」から「共同当事者」へと踏み出したという点で、両国関係の重要な転換点となった。それだけに、戦争の長期化がもたらす波紋も大きい。

 米国はこれまでもイスラエルを強く支持してきた。巨額の軍事援助や最新兵器の供与、諜報協力、国連安全保障理事会での外交的擁護、イスラエルの「質的軍事優位」(QME)を維持する政策などは、その代表例だ。

 しかし、支持することと、一緒に戦争を行うことはまったく異なる。イスラエルが23年10月以降、レバノン、シリア、ガザなどで軍事行動を進めるなかでも、米国は支持や後方支援を行いつつも、中東の戦争に全面的に巻き込まれることは避けようとしてきた。25年6月にはイスラエルの対イラン戦争に加わって核施設を攻撃したが、それはあくまで一度限りの限定作戦だった。

 これに対し、今回は開戦時からイスラエルと共同で大規模作戦に踏み込み、米国は戦争の「共同当事者」となった。その意味で、今回の戦争は明確に一線を越える出来事だった。

 背景には、ネタニヤフ首相とトランプ大統領、それぞれの思惑があった。ネタニヤフ首相は、地域の反イスラエル勢力を主導するイランに徹底的な打撃を与えるため、米国を戦争に引き込もうとした。一方、秋の中間選挙を控えたトランプ大統領には、軍事力の行使によって短期間で成果を上げ、「強い大統領」を演出しようとする狙いがあった。

 だが、戦闘の長期化とホルムズ海峡の混乱が世界経済や米国経済に及ぶなか、早期収束を求めるトランプ大統領と、イランの能力をさらにそごうとするネタニヤフ首相の利害は、次第に齟齬(そご)を来すようになっている。

 米国とイスラエルは、旧約聖書の物語が双方の社会や政治文化に深く入り込んでいるという宗教的・歴史的背景、イスラエルの地域パートナーとしての戦略的価値、米国内の広範な親イスラエル勢力の影響力などを背景に、「特別な関係」を維持してきた。

 だが、イラン戦争の予想外の長期化は、両国関係そのものを終わらせないまでも、その運用と中東における両国の影響力を確実に変えつつある。