インターネットに雑誌にテレビに本……。今やたくさんの子育てをめぐるアドバイスが氾濫している。しかも親の時代とは違い、学校カリキュラムではカバーしきれない「21世紀スキル」や「非認知能力」といったスキルも重要だとされている。そんな中、親として子に何をしてやればいいのか。それを東京大学出身の著者がまとめ、ロングセラーになっているのが『子育てベスト100』だ。今の親が知っておきたい、100のメソッドとは?
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日本の子どもは睡眠時間が足りない
「コミュニケーションの取り方」から、「家での勉強のしかた」「遊び」「習い事」「ほめ方・叱り方」「読書」「スマホ対策」「ゲーム対策」「食事」「睡眠」「運動」などなど。
親たちが知りたい新時代の「子育ての教科書」ともいうべき1冊として、ロングセラーになっているのが本書だ。
著者の加藤紀子氏は、1996年に東京大学経済学部を卒業。国際電信電話(現KDDI)を経て渡米、帰国後は中学受験、子どものメンタル、子どもの英語教育、海外大学進学など教育分野を中心に、さまざまなメディアで取材、執筆活動を行ってきた。自らも一男一女を持つ女性である。
本書は、長年の経験で得た情報を、親としての「これは使えるな」という実感でふるいにかけ、教育学、生理学、心理学、脳科学など、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめ上げた。
ハーバード大、スタンフォード大、シカゴ大などの資料も用いられている。まさに経験と知識から紡ぎ出されたベスト100のメソッドと、すぐできる421の「超具体策」が紹介されている1冊だ。
6つある章のうち、SECTION 3で紹介されているのが、「自己肯定感をつけるには? 変化に強い『折れない心』をつくる」。
その冒頭に登場するのは、意外なものだった。METHOD 31「『良質な睡眠』をとる――日本の子どもは睡眠が足りない」である。
「子どもがキレやすかったり、プレッシャーやストレス、不安に弱い場合、睡眠不足が引き金になっていることがある」と小児科医でもある文教大学教育学部の成田奈緒子教授と臨床心理士の上岡勇二氏は指摘しているそうだ。
子どもに必要な睡眠時間は?
質のよい睡眠は、体の成長や学力アップのためだけでなく、心の安定にもとても重要。では「良質な睡眠」をとるにはどうすればいいか。まずは時間。
アメリカ国立睡眠財団によると、子どもの理想の平均睡眠時間は、3~5歳で10~13時間、6~13歳で9~11時間です。これに対して江戸川大学睡眠研究所所長の福田一彦教授は、日本の子どもたちは世界的に見て睡眠時間が短く、その主な要因は寝る時間が遅いからだと述べています。(P.122-123)
となれば、まずはやるべきは「早寝」だ。
加えて、「良質な睡眠」をとるための策として、「お風呂は寝る90分前がベスト」「寝る直前は食事を控える」「朝は朝日を浴びる」「電子機器は寝る1時間前から見ない」「休みの日に『寝だめ』しない」といった方法が紹介されている。
日本の高校生は自己肯定感が極端に低い
そして「自己肯定感をつけるには?」で睡眠の次に続くのが、「METHOD 32『多様な視点』を手に入れる――ひとつの正解だけをめざさない」だ。
親としては、ついつい自分の価値観を押し付けてしまいがち。これは肝に銘じておかなければいけないものだろう。
その原因のひとつは「受験で多く見られるような『閉じた問い(解答範囲が制限された問い)』とそれに基づく評価が挙げられるのではないか」と、小児科医でお茶の水女子大学名誉教授の榊原洋一氏は指摘します。「たったひとつの正しい解を追い求める行為をくりかえしていると、子どもは自分のできないことにばかり目が向くようになる」といいます。(P.125)
この文章を書いている私には、過去に高校生たちをサポートしているNPO法人について取材して書いた著書『「カタリバ」という授業』があるが、ここで冒頭で紹介したのが、日本の高校生たちの驚くべき自己肯定感の低さだった。
世界に比べて、圧倒的に低いのだ。それは、評価される軸がわずかしかない、ということに起因していた印象がある。
では、子どもが「多様な視点」を手に入れるためにはどうすればいいか。
本書では、「『安心して発言できる場所』をつくる」「たくさんの『答え』がある体験をする」「さまざまな人の生き方を知る」「親も常識をアップデートする」といった方法が紹介されている。最も危ないのは、親の古い価値観なのかもしれない。
子どもが創造力をつけるには?
6つある章のうち、SECTION4で展開されているのが、「創造力をつけるには? 柔軟な脳にたくさんの『刺激』を与える」だ。
生成AIが当たり前に使われるようになる時代。これから人間にしかできない創造力を身につけさせたいと考えている親は少なくないのではないか。
では、どうすればいいのか。METHOD 54「『アート』に触れる――気軽にいろんな感想を語る」を紹介しよう。
「20世紀の世界経済はサイエンスとテクノロジーが変えたが、21世紀の世界経済はアートとデザインが変える」
実際、近年では、固定概念を壊し、自由な発想をもたらすものとして、アートがビジネスの世界でも重視されるようになっています。(P.195)
では、効果的に「アート」に接するにはどうすればいいか。
「すぐできる超具体策」として、「気軽に美術館に行く」「お気に入りの作品を選ぶ」「親子で対話する」「多様な意見を受け入れる」といった方法が挙げられている。美術館に行った際に、子どもとどうコミュニケーションすればいいのかといった具体的なシーンへのアドバイスも記されている。
そしてもう一つ、「創造力をつけるには?」で興味深いのが、METHOD 55「没入させる――フローに入るのを邪魔しない」だ。フローは、自分の好きなことをしているときに起こる。
賞やお金、評価など、周囲から与えられるものよりも、興味や楽しさ、満足感ややりがいなど、内から湧き出るモチベーションが高いほど、人は創造的になるといっています。(P.198)
子どもがフロー状態にあるときをじっくり観察すれば、子どものやりたいこと、得意なことが見えてくる。
では、没頭する体験をさせるにはどうすればいいのか。「シンプルな環境にする」「スクリーンをオフにする」「積極的な活動の時間を増やす」「急かさない」「親自身が没頭することを見つける」といった方法が解説されている。
本書は、創造力のみならず、コミュニケーション力、思考力、自己肯定感、学力、体力と6つの章で展開されるが、とにかく具体的で実践的なメソッドが多く紹介されているのが特徴だ。子育ての「どうすればいいか?」が1冊に詰まっているのだ。
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『「また頼みたい」と言われる人がやっていること』(CEメディアハウス)、『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』(日経ビジネス人文庫)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。





