「勉強ができるようになりたい」~学生の頃、一度はそう思ったことがあるのではないだろうか。どうやったら勉強ができるようになるのか。親ゆずりの知能が高ければいいのか?しかし、知能が高くても「学ぶ力」がなければ勉強ができるようにはならないのだ。学ぶ力とは何か、三つの側面から考えてみたい。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
なぜ「勉強ができる子」と「勉強ができない子」がいるのか
「勉強ができるようになりたい」これは、学校に通う年頃なら、だれもが思うことなのではないか。
もちろん、勉強よりスポーツができるようになりたいという人や、勉強より楽器演奏ができるようになりたいという人もいるだろう。勉強ができる子よりも友だちから人気のある子になりたいという人もいるかもしれない。
でも、わざわざ勉強ができない子になりたいとは思わないだろう。何に価値を置くかは人それぞれだが、可能なら勉強もできるようになりたいという思いは、だれもが抱えているはずだ。
僕は、小学生の頃、勉強にあまり価値を置いていなかった。遊んでいる方がずっと楽しいといった感じで過ごしていた。当然ながら、成績はけっして良くなかった。そんな僕でも、同じクラスの勉強ができる子たちに対して、「すごいなあ、なんであんなにできるんだろう?」と不思議に思ったりしたものだ。
この本を読み始めた人の中にも、周囲の勉強ができる子に対して、「なんであんなによくできるんだろう?」「自分と何が違うんだろう?」と疑問に思う人が少なくないはずだ。
逆に周囲の勉強があまりできない子に対して、「なんでできないんだろう?」「自分とどこが違うんだろう?」と不思議に思っている人もいるかもしれない。
いずれにしても、なぜ勉強ができたりできなかったりするのかは、とても興味深いテーマなのではないか。
中学に入るまで成績がパッとしなかった僕も、いつの間にかコツをつかんで勉強ができるようになった。さらには、教育心理学を専門にすることで、どうしたら勉強ができるようになるのか、勉強ができる子とできない子は何が違うのかという問題に関するさまざまな知見に接し、「なるほど!」と納得することもあれば、「そうかなあ?」と疑問に思うこともあり、いろいろと調べながら考えてきた。
そのような立場から、勉強ができる子とあまりできない子の違いはどこにあるのか、どうしたら勉強ができるようになるのか、といったことについて考えていきたい。
その際、知的能力を意味する認知能力の他に、最近教育界で注目されている非認知能力、さらには今後注目されるであろうメタ認知能力を取り上げることにする。勉強に関連する三つの能力の側面から、勉強ができるようになるためのヒントを示すことにしたい。