インターネットに雑誌にテレビに本……。今やたくさんの子育てをめぐるアドバイスが氾濫している。しかも親の時代とは違い、学校カリキュラムではカバーしきれない「21世紀スキル」や「非認知能力」といったスキルも重要だとされている。そんな中、親として子に何をしてやればいいのか。それを東京大学出身の著者がまとめ、ロングセラーになっているのが『子育てベスト100』だ。今の親が知っておきたい、100のメソッドとは?

勉強する子どもと親Photo: Adobe Stock

成功者の共通点は「情熱」だった

「コミュニケーションの取り方」から、「家での勉強のしかた」「遊び」「習い事」「ほめ方・叱り方」「読書」「スマホ対策」「ゲーム対策」「食事」「睡眠」「運動」などなど。

 親たちが知りたい新時代の「子育ての教科書」ともいうべき1冊として、ロングセラーになっているのが本書だ。

 著者の加藤紀子氏は、1996年に東京大学経済学部を卒業。国際電信電話(現KDDI)を経て渡米、帰国後は中学受験、子どものメンタル、子どもの英語教育、海外大学進学など教育分野を中心に、さまざまなメディアで取材、執筆活動を行ってきた。自らも一男一女を持つ女性である。

 本書は、長年の経験で得た情報を、親としての「これは使えるな」という実感でふるいにかけ、教育学、生理学、心理学、脳科学など、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめ上げた。

 ハーバード大、スタンフォード大、シカゴ大などの資料も用いられている。まさに経験と知識から紡ぎ出されたベスト100のメソッドと、すぐできる421の「超具体策」が紹介されている1冊だ。

 6つある章のうち、SECTION 2で紹介されているのが、「思考力をつけるには?」。

 その最初に登場するのが、「METHOD 19『好きなこと』を見つける――機会がなければ見つからない」である。

ハーバード大学テクノロジー起業センターで初代フェローを務めたトニー・ワグナー博士は、「若いビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、より最近ではマーク・ザッカーバーグ(中略)、彼らには毎晩遅くまでプログラムを書くように脅したりおだてたりする『タイガー・マザー』(スパルタ式の厳しい母親)はいなかった。彼らにあったのは情熱だ」といっています。(『未来のイノベーターはどう育つのか』英治出版)
ワグナー博士がイノベーターとその親、教師、メンター(指導者)に計150件以上のインタビューを行なったところ、最もよく出てきた言葉は「情熱」でした。(P.82)

 また、臨床心理学者のジェゼフ・バーゴ博士によると、お金や名声を熱望している人よりも、純粋に好きなことに打ち込んでいる人のほうが成功しやすいというエピソードも紹介されている。

「好きなこと」を見つける方法

 時間を忘れて没頭するほどの情熱は、「もっと知りたい」「上手になりたい」という気持ちを引き出し、そのためにはどうすればいいのかを考える力を伸ばしていくというのだ。

 では、「好きなこと」を見つけるにはどうすればいいのか。

 本書では4つの「すぐできる超具体策」が列記され、それぞれが詳しく紹介される。一つ目は、意外なアドバイスだ。

■「したことのないこと」に注目する
子どもに「好きなことはなにか」と聞いても、自分には好きなことがないと言うかもしれません。
しかし創造性とイノベーション教育を専門とするイギリス・ウォーリック大学のケン・ロビンソン名誉教授は、これは「機会の有無」にかかっているといいます(『才能を磨く』大和書房)
いま子どもにとってそんなに夢中になれることがないとしたら、一度もやったことのない分野に対して心をオープンにし、積極的にトライしてみることをロビンソン名誉教授は勧めています。(P.82-83)

 好きなこと、夢中になれることは、機会を与えられていないから見つけられていない可能性が高いということだ。他にも具体的な方法が解説されるが、実はあるのかもしれないけれど、子どもが気づいていない可能性もあるのである。

結果だけでなく、取り組み方そのものに気を配る

「思考力をつけるには?」のメソッドで興味深いものに、METHOD 24「『深掘りの意欲を伸ばす』――成績より過程に注目する」がある。

東京大学高大連携推進部門の心理学者である白水始教授は「『試行錯誤しながら学ぶ力』は、本来は誰にでも備わっている」といっています。ところが残念ながら、子どもは成績だけをほめられると、かえって学ぼうとする意欲を削がれてしまうといいます。
子どもはもともと単純に「楽しい」という理由からがんばるのですが、がんばった内容には触れずに結果だけをほめられ、さらにはごほうびまで与えられたりすると、「点数しか見ないんだな」「自分がやっていたことはごほうびのためだったのか」と、楽しい気持ちが損なわれてしまうのだそうです。(P.97)

 これは、親としてはドキリとさせられる言葉かもしれない。結果だけに注目するのではなく、取り組んでいる中身や、子どもの取り組み方そのものに気を配ることが大事なのだ。

「深掘り」の意欲を伸ばすための「すぐできる超具体策」として、「どんなことも『前進』ととらえる」「子どもに質問をする」「親の好きな分野と話をからめる」「『専門家』の言葉に触れる」が解説されていく。

金銭感覚は子どもの未来にとって欠かせない力

 もう一つ、「思考力をつけるには?」のメソッドで興味深いものとして、「METHOD 26『金銭感覚』を身につける――自己管理を体験する」がある。金銭感覚が思考力につながるとは、どういうことか。

世界的に有名な投資家、ウォーレン・バフェットは「小さいころに養った金融の習慣は、大人になっても続く」といい、金融の素地がなければ成功する起業家になれないと述べています。
日本でも老後の資金が話題になったように、今後はこれまで以上に自分で自分のお金を守り、増やして、備えていかなければいけない時代です。幼いころから金銭感覚を身につけておくことは、子どもたちの未来にとって欠かせない力になります。(P.104)

 そして、最初に紹介されている具体策が「おこづかい教育5か条」だ。

 ファイナンシャルプランナーで、子どもの金銭教育の啓蒙活動を行うNPO法人「マネー・スプラウト」の設立者である羽田野博子氏が掲げているという。

①お金は親が働いているからもらえる
②お金は使ったらなくなる
③優先順位をつけて使う
④貯金の習慣をつける
⑤お金では買えないものもある(P.105)

「金銭感覚」を身につける方法として、他にも、「『100円』で買う練習をする」「『必要』か『欲しいだけ』かを考えさせる」「自分の財布を持たせる」「使い方に口を出さない」といった方法が解説される。

 本書は「思考力をつけるには?」のみならず、コミュニケーション力、自己肯定感、創造力、学力、体力と6つの章で展開されるが、とにかく具体的で実践的なメソッドが紹介されているのが特徴だ。子育ての「どうすればいいか?」が1冊に詰まっているのだ。

上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『「また頼みたい」と言われる人がやっていること』(CEメディアハウス)、『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』(日経ビジネス人文庫)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。