「定年後は好きなことをして過ごしたい」
「いつまでも元気に、自分の人生を楽しみたい」
そう思い描いている人は多いだろう。だが、その未来を閉ざす思わぬ落とし穴がある。体が健康でも、認知症になれば、人生の楽しみ方が大きく制限されてしまう。多くの人が備えているのは「体の健康」だが、「脳の健康」については見落とされがちである。元オックスフォード大の医学研究者であり、医学博士として脳と糖の関係を研究してきた下村健寿氏は、認知症の発症に深く関わる「意外な要因」を指摘している。下村氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』から、人生後半を楽しむために知っておきたい事実について紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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「人生後半」の幸福度を大きく左右すること
食事に気をつけている。
運動もしている。
睡眠も十分にとっている。
それでも人生後半の幸福度を大きく左右してしまうのが、「認知症」だ。
体は元気でも、脳の機能が低下すれば、人生の楽しみ方は大きく変わってしまう。
好きだったことが楽しめなくなる。
大切な人との記憶が失われていく。
「長生きすること」と、「人生を楽しめることは同じではない。
では、その分かれ道はどこにあるのか。
見落としている「糖」という魔の手
認知症というと、「遺伝」や「年齢」の問題だと考えがちだ。
しかし、元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は、著書『糖毒脳』で、もっと身近な原因に目を向ける必要があると指摘している。
じつは私たちの身近なところに、脳を蝕む「魔の手」が潜んでいます。
それは、日々の食生活に潜む「糖」です。
――『糖毒脳』より引用
糖の問題は、「太るかどうか」だけではない。
近年では、より深刻な影響が指摘されている。
米国ミネソタ州南東部の地域住民を対象とした大規模研究では、アルツハイマー病患者の81%が2型糖尿病、または糖尿病予備群であったと報告されています。
この数字は、過剰な「糖」が糖尿病もアルツハイマー病も引き起こしているという事実を示しています。
実際、2つの疾患は「原因が同じ病気」と言っても過言ではありません。
アルツハイマー病を「3型糖尿病」と考える専門家は世界に数多く存在します。
――『糖毒脳』より引用
つまり、糖の摂りすぎは、単なる生活習慣の問題ではない。
脳の病気そのものと深く結びついているのだ。
「糖の摂りすぎ」をやめよう
では、何がリスクを高めるのか。
それは、特別なことではない。
日常の中で繰り返されている「糖の摂りすぎ」だ。
糖を摂ると血糖値を下げるためにインスリンが分泌される。
しかし糖の過剰摂取が続くと、やがてインスリンが出づらくなったり、効き目が落ちたりしてしまう。
下村氏は、インスリンが脳にもたらす役割として、同書でこう述べている。
インスリンは脳内で「学習」や「記憶」を司る脳神経細胞同士の情報伝達をスムーズにしたり、アルツハイマー病の原因となる「アミロイドβ」などによる攻撃から脳神経細胞を守る役割も果たしている。
――『糖毒脳』より引用
そのインスリン分泌に異常がおきるため、結果として糖の摂りすぎは認知症リスクを高めてしまうのだ。
さらに、その影響は静かに積み重なり、気づかないうちに脳の機能は少しずつ低下していく。
「糖」を摂りすぎていること。
これが、やがて人生の質の差となって現れる。
人生後半の分かれ道は、すでに日常の食習慣の中にあるのかもしれない。
(本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








