10年計画で「AIネイティブ」なビジネスプロセスへと変革

――AIを今後どのように経営に組み込んでいくのか、ロードマップを教えてください。

藤井 10年計画で進めています。最初の数年でありとあらゆる領域で自律型AIエージェントをできるだけ多く開発します。それらがある程度出そろってくると、やがて個別エージェント同士で勝手に横連携し始め、プロセス全体をカバーし始める。AGI(汎用人工知能)やASI(人工超知能)が登場すれば、最終的には銀行のプロセス全体がAIで自律的に動くようになるというイメージです。

 そのために今取り組んでいるのが、今までの仕事の流れの部分的な改善ではなく、エンドツーエンドで考え直すAIネイティブなビジネスプロセスの定義です。現在の業務プロセスはすべて人が動く前提で組まれていますが、それをAIエージェントが動くことを前提に根本から再設計するのです。各ビジネスユニットのDXリードが、自分たちのプロセスの全体像を定義し、そのプロセスをAIエージェントで動かすにはどのようなエージェントが必要かを洗い出す。それを基に内製開発ラボが実装を進めます。プロトタイプやボツになったものも含めると現時点で数百のエージェントが動いており、実装も始まっています。

 企業規模が大きく、一気に変えるのは難しいため、35年ごろの実現を視野に入れています。ただ、技術の進化のスピード次第では、もっと早くなる可能性もあります。

AIエージェントが銀行を変える——みずほフィナンシャルグループが描く「AIネイティブ」な金融の未来みずほフィナンシャルグループ
執行役員 デジタル戦略部長 Chief AI Officer
藤井 達人

1998年からIBMでメガバンクの基幹系開発、金融機関向けコンサル業務に従事。日本マイクロソフトを経て三菱UFJフィナンシャルグループのイノベーション事業に参画しDXプロジェクトを主導。auフィナンシャルホールディングス執行役員、日本マイクロソフト業務執行役員を経て23年6月からみずほフィナンシャルグループ執行理事兼デジタル企画部部長。同志社大卒、東大エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。日本ブロックチェーン協会理事。

――AIの活用によって、金融機関の姿はどのように変わっていくとお考えですか。

藤井 お客さまの変化の方が、私たちの変化よりも早く来ると思っています。ガートナーが「マシンカスタマー」というキーワードで指摘しているように、お客さまがどんどんAI化し、お客さま自身のAIエージェントが金融機関にアクセスしてくる時代がすぐそこまで来ています。私たちは、BtoC、BtoBに続いて、BtoA(ビジネス・トゥ・エージェント)にも対応することになるのです。

――A(エージェント)、B(ビジネス)、C(カスタマー)全てに対応する時代になると。

藤井 はい。エージェントは金融機関同士のサービスを淡々と比較する。人間にとって見栄えのよいウェブサイトなどエージェントには何の意味もありません。エージェントがアクセスしてきたときに、正しい情報を構造化して提供できる仕組みが必要です。MCP(AIと外部アプリケーションをつなぐためのオープンプロトコル)のようなインターフェースを通じて金融機能をエージェントに提供していく新たなチャネルを設計しなければなりません。法人のお客さまでも個人のお客さまでもこの流れは同様です。

 その中で、エージェントが対応するチャネルと、人が直接対応するチャネルははっきりと分かれていくと思います。対人チャネルは、お客さまを断片的な情報ではなく360度捉えた上で、今よりもきめ細かいサービスを提供するようになるでしょう。最後のひと押しが必要な場面や、お客さまが言葉にできない行間を読んでほしいと思う場面は必ず残るので、人が対峙する領域は絶対になくならない。

 一方エージェント対応のチャネルでは、人のように振る舞うエージェントが登場し、お客さまが人間との違いを意識せずサービスを受けられる形になっていくのではないでしょうか。最終的にはお客さまが、自身の好みやライフステージに応じてエージェントと人を使い分けるようになるでしょう。

 その先になると、私たち金融機関のサービスだけではお客さまの要望は完結しなくなる。お客さまの目的に応じて、不動産やその他あらゆる業界のサービスを横断的に組み合わせる必要が出てきます。そうなれば、他社のエージェントと相互に連携し、社会全体で一つの価値を提供するエージェントエコノミーとでもいうべき巨大な経済圏が形成されていく。私たちはそのエコシステムの一員となるべく変革を続けていきます。