AI時代の人材育成に不可欠なのは組織を“縦軸”と“横軸”で再設計すること髙倉千春氏 高倉&Company合同会社共同代表

生成AIの急速な普及は、企業のビジネスモデルを根底から揺さぶりつつある。経営環境が激変する中、企業はどのように人材を育成、配置し、どう活用していくべきなのか。農林水産省、外資系製薬大手、味の素、ロート製薬といった多様なフィールドで人事をけん引してきた髙倉千春氏に、世界の人事トレンドと日本企業が直面している課題、そして個人がこれから歩むべきキャリアについて聞いた。(取材・文/ライター 奥田由意、撮影/平松唯加子)

労働供給量の減少が迫る人事戦略の大転換

――近年の世界と日本における人事のトレンドをどのように見ていますか。

髙倉 まず前提として無視できないのが、労働供給量の減少です。とりわけ日本の状況は深刻で、2050年までに、労働生産人口は30%減少することが分かっています。※1

※1 令和4年版高齢者白書

 企業の採用活動は、「今年が一番採用しやすい年」だという認識を持つべきで、来年、再来年と進むにつれ、優秀な人材の獲得は文字通り「奪い合い」になる。こうした労働供給量の不足にどう立ち向かうかが経営の最優先事項となっています。もっとも、優秀人材の定義もAIの導入により再検討しなければならないとなると、今までの日本企業の人材戦略を見直す必要が出てきています。

 欧米でも労働供給量の減少は起きており、日本より労働市場の流動性が高い分、優秀な人材が離職すれば採用コストが2倍、3倍とかかる。だからいい人材をリテンション(引き留め)する施策がより重要になっているという状況です。

 戦後から続く日本特有の雇用慣行も転換点を迎えています。社員の働く地域や職種を会社が決め、社員が従う仕組みである「無限定性雇用」は、終身雇用や年功序列、企業内組合のベースとなり日本経済を支えてきたエコシステムですが、これがグローバル化や、戦略上求められるポジション要件をもとに適材を登用するという、いわゆる「ジョブ型雇用」と衝突を起こしています。

 欧米の雇用は、あくまで会社と個人の契約がベースですので、一方的な企業側の命令に従うのではなく、個人の専門性や志向に基づいて個人側が働く場所を選ぶことができる。日本企業がグローバル市場で競争力を獲得するには、日本型の従来のエコシステムを見直し、将来に向けて価値を創造する主体である個人に焦点を当てる必要が出てきています。

 人事制度も今までの一律管理型から各人の志、特性、ポテンシャルを十分発揮できる多様な「個」を生かす方向性が不可欠になってきました。

――AIがビジネスモデルや働き方を大きく変える中で、人事にはどのような戦略が求められているのでしょうか。