AIエージェントが銀行を変える——みずほフィナンシャルグループが描く「AIネイティブ」な金融の未来

生成AIの登場以来、金融業界でもAI活用の機運は急速に高まっているが、みずほフィナンシャルグループの取り組みは単なる業務効率化にとどまらない。独自LLMの開発、50人のエンジニアによる内製開発ラボ、そして「AIネイティブなビジネスプロセス」の再設計まで、10年という長期スパンで金融機関の姿そのものを変えようとしている。その全貌を、同グループデジタル戦略部長 Chief AI Officerの藤井達人氏が語る。(取材・文/ライター 奥田由意、撮影/加藤昌人)

20人の小組織から200人強へ——デジタル戦略部が全社横串でAI活用を支援

――みずほフィナンシャルグループでは、みずほ銀行の加藤勝彦頭取が自らAIエージェントで来店予約システムの構築にトライするなど、グループをあげて積極的にAIを活用されています。このような動きはいつ頃から始まったのでしょうか。

藤井 私が入社したのは2023年6月でしたが、ちょうどそのタイミングで社内標準AIチャットツールがリリースされました。ただ、当時は入力できるテキストの長さにも制限があり、性能的には今と比べると相当劣るものでした。ハルシネーションという言葉もまだ社内に浸透しておらず、「それっぽいけど嘘っぽいものも混じってるよね」という警戒感が社内にあった時期です。

 転機は23年秋。社内の生産性改善から、対お客さまへの活用、さらにはAIを経営にどう生かすかという長期目線の議論が本格的に動き出しました。そして24年4月、AIの専門知識とノウハウを集約したAIX推進室をセンター・オブ・エクセレンス(CoE)として立ち上げました。最初は20人ちょっとの小さな組織でしたが、今はデジタル戦略部として200人強の規模にまで成長しています。約2年で10倍になったことになります。

――わずか2年で約10倍規模に拡大しているところに、グループ全体でAI活用にかける強力な意志を感じます。藤井さんが率いるデジタル戦略部はどのような役割を担っているのですか。

藤井 デジタル戦略部の最も重要な役割は、グループ内の約15のビジネスユニット全体を横串で支援し、エンドツーエンドのプロセスの変革を実現することです。各ビジネスユニットには、それぞれDXの変革責任者(DXリード)と数人から十数人規模のサポートチームを配置しています。

 これまではリテール部門や人事部門など、部門単独で改革を進めていましたが、お客さまから見れば銀行のサービス提供のプロセスに部門の壁は関係ありません。お客さまからの要望を受けて価値を提供し、それに伴うリスクを確定するまでの一連の流れを包括的に変革するには、各ユニットの責任者が横断的に連携する必要があります。デジタル戦略部はDXリードとそのチームからなるDXタスクフォース全体に対して、テクノロジー面でのサポート、プラットフォームの整備、DXノウハウの共有などを日常的に行っています。