JAL社員が凍り付いた…稲盛和夫が「電気代の減少」でブチ切れた“恐るべき数字感覚”Photo:JIJI

JAL再建を担った稲盛和夫氏の興味深いエピソードを聞いた。そこまで細かくならなくても…とも思ってしまいそうな逸話なのだが、そこには数字と誠実に向き合う姿勢が見え、「経営の神様」と言われる所以が詰まっているようだ。(イトモス研究所所長 小倉健一)

JAL社員が語る稲盛和夫の「電気代の支払い」エピソード

 先日、久しぶりにお会いした日本航空(JAL)の(破綻から再生にかけて最前線で支えた)社員が、稲盛和夫氏の経営手法について非常に興味深いエピソードを語ってくれた。

 経営の神様と呼ばれた人物がいったいどのような視点で会社を見ていたのか、読者の皆さんも想像してみてほしい。

 稲盛氏の考え方は、会社経営を大きな数字、全体像から細部へと落とし込んでいくのではなく、目の前にある小さな事実を一つひとつ積み上げ、大きな結果へとつなげていく手法だったというのだ。

 あるとき、会社の電気代が4月は少ないことに稲盛から厳しい指摘があった。稲盛氏は、なぜ減ったのかと担当者に問い詰めた。担当者が調べてみると、単純に電気代が2カ月に1度の支払い契約になっていたため、支払い月にまとめて計上されているだけだった。

 つまり、次の月の電気代がその分高かったというわけだ。普通の感覚であれば無駄遣いをしたわけではないのだなと納得して終わりにしてしまうかもしれない。

 しかし、稲盛氏は安易な言い訳を一切許さなかった。支払い月であろうとなかろうと、1カ月間にいったいいくらの電気代がかかっているのかを、毎月正確に算出して記録するように厳格な指示を出したのである。

 電気代という一見すると些細な経費であっても、実態を毎月正確に把握できなければ、正しい経営判断を下すことはできない。いかに事実の正確さが大切であるかを、社員は身をもって深く理解することになった。数字を曖昧に扱う組織は、必ずどこかで大きなほころびを生むからだ。