「あんた死ぬわよ」なぜ人は信じた?細木数子を「時代の寵児」にした3つのダークスキルPhoto:JIJI

Netflixで独占配信されているドラマ『地獄に堕ちるわよ』のモデル・細木数子氏が再注目されている。占いの的中率は決して高くなかったにもかかわらず、彼女は絶大な人気を得た。細木氏は2000年代の迷える大衆に何を与えたのか。巧みな話術や心理効果、そして「大殺界」という強力な概念を手がかりに、社会現象となった理由を読み解く。(イトモス研究所所長 小倉健一)

不安な日本社会で必要だった「断言」と「言い訳」

 2000年代の日本社会において、細木数子は時代の寵児であった。

「あんた死ぬわよ」「地獄へ落ちるわよ」といった言葉でお茶の間の視線を釘付けにし、出演番組の最高視聴率は23.5パーセントを記録した。まさに「お茶の間のアイドル」になったわけだ。

 細木が提唱した「六星占術」は、果たしてどれほど未来を言い当てていたのだろうか。

 ジャーナリストの溝口敦氏が著した『細木数子 魔女の履歴書』(講談社)には、占いの的中率は34パーセント前後に過ぎないという雑誌の調査が紹介されている。他報道でも指摘されているように、半分は外していたと考えれば、まさしく「当たるも八卦当たらぬも八卦」という言葉が相応しい。

 しかし、現実には当たらない占い師として見放されるどころか、かつてない熱狂を生み出していった。

 なぜ人々は魅了されたのか。当時の大衆が求めていたのは、客観的な未来の予測ではなく、不安な時代を生き抜くための「絶対的な断言」と、心の重荷を下ろすための「言い訳」であった。

 的中率の低さにもかかわらず「よく当たる」と錯覚させた理由の1つは、人間の心理を利用した巧みな話術にある。その話術には、誰にでも当てはまる曖昧な性格描写を、自分への特別なメッセージだと受け取ってしまう「バーナム効果」があった。

 また、テレビ番組の中で大量の警告を与えていた点も大きい。人生において高い確率で起こりうる出来事を網羅的に並べておけば、どれか1つは現実になる。外れた予言は記憶から消え、偶然一致した出来事だけが強く記憶に残る。

 加えて、論理には決して反証できない「無敵の構造」が備わっていた。