サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した映画監督/脚本家の長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

なぜ監督になれたのか

 映画監督/脚本家の長久允さんは、電通社員でありながら映画を撮っているという異色の存在だ。

 もともと映画業界にいたわけではないのに、どうやって、出演者やスタッフを集め映画にしたのだろうか。

 特別な伝手や、莫大な資金があったわけでもなかったという。

 なぜ、彼のもとには人が集まってきたのか。

まっすぐ、直接オファーする

 その秘訣が垣間見える記述を、長久さんの著書『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう脚本の教室』から見つけた。

 10日間の有給休暇を使い、『そうして私たちはプールに金魚を、』という映画を撮ったときのことだ。

 当時、私は監督でもなんでもなかったのでスタッフの知り合いはほとんどいませんでしたが、人生で1回きりの映画ですから、後悔しないように本当に好きな技術者たちと作ることにしました。

 好きなルックのMVのカメラマンさんや照明さんを調べて連絡をとり、参加してもらいました。音楽もこの映画にぴったりのバンドにDMを送り、最高の曲を作ってもらいました。俳優も、普通は出てもらえないような方々ばかりでしたが、熱意を持って企画を説明し、出演していただけました。

――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p.34より

 なるほど、自ら心から良いと思っている人にまっすぐ、直接オファーしている。

 その熱意が大物にも伝わったのだろう。

プロとしての仲間を信頼する

 さらに長久さんは、こうも言っている。

 どうしても撮りたい物語がある。しかし予算はない。
 しかし絶対に撮るべきだと確信している。
 そういうときはすぐにあきらめたりせずに、考え抜きましょう。知恵を出し合いましょう。できることを、スタッフとキャストみんなで工夫をし、協力してもらい、作っていきましょう。
 映画はみんなで作るものです。みんなプロなので、それぞれのアイデアを出してくれます。助けてもらいましょう。

 

――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p.213-214より

 やりたいことはしっかり自分の中に持ちつつ、プロとしてのメンバーを頼る

 これは映画や脚本のみならず、すべての業界で、人を集める役割にある人が参考になる経験談だと感じた。