サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した映画監督/脚本家の長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

とにかく現場で迷う時間をなくす

「1日ですべての撮影を終えなければならない」

 スケジュールが限られた現場では、こんなことも起こります。

 監督としてどのようにプロフェッショナルのチームをまとめ、良い作品をつくるか。

 とにかく、スタッフとキャストの拘束日程を最小限に抑えることが鍵です。

 深夜の撮影はタクシーなどの料金がかかるので、絶対に終電を越えてはなりません。
 というかそもそももっとまともな時間に終えたい。眠いし! 疲れるし! お腹すくし!

 ということで、とにかく重要なのは「撮影の当日は、本当に必要なこと以外やらない」ことです。マッハスピードで撮影を進行しましょう。

 そこで、あなたが監督の場合、撮影本番日にカット可能な時間は、「あなたが悩む時間」です。

「え~~~っと、そっかそっか、そうなるか~、どうしようかな~~~、困ったな~~~~、うわ~~~わかんないっすわ~。え~どうしようどうしよう。ちょっと30分考えさせてください」

 という時間。

 たとえば急に降ってきた雨、思ってた感じと違う俳優の演技、救急車のサイレンが近くでずっと鳴っているなどなど、撮影現場では、突然さまざまな問題が提示されます。

 監督はチームのリーダーとして、突発的に起こった問題に対して「こうしよう」と方針を提示する必要があります

 莫大な予算があれば、「今日はやめておきましょう。このシーンはまた明日撮りましょう」と言えるかもしれませんが、そんな決断は相当な巨匠でもない限り、許されません。

 何より時間を止めることはできません。あなたがどうするべきか悩んでいるうちに、日が暮れてデイシーンが撮れなくなる、なんて最悪の事態です。

 限られた時間の中で最高のものを作るために、事前に考え尽くして、悩む時間を最小限に抑えること。そもそも問題を発生させないようにすることが、非常に大切です。

信頼でつながるチームができる

 そのほかにも、撮影方法を事前に決めておく、音待ちをなくすためアフレコにする、別日に俳優の演技のリハーサルをしておく、などで現場で悩む時間を大きく削ることができるのです。

 もちろん、「撮影当日に練習なしで初めてやる新鮮な演技」が至高! という考えもわからなくもないのですが、それはそれで「演技」というものを逆に信頼していない考えではないか、とも思うわけです。

 私たちは俳優という職人と共犯関係でなければならないと思います。

 彼ら彼女たちと、脚本の方向性やキャラクター設定、そしてそのシーンでの細やかな狙いを共有し、話し合い、確認作業を積み重ねて、ベストのテイクを撮るべきだと思っています。

 実際に事前に話し合いを重ねて、稽古を経ることができた現場は、演技的にも演出的にも双方のブレがないわけですから、ほぼ1テイクでOKを出していくことができます。

 やはりそれは、俳優部にもストレスを感じさせずに進められる確実な方法だとも思うのです。