宇多田ヒカルさんの英語インタビューで
いきなり飛び出した「意外な日本語」

 筆者が、宇多田さんに〈日本人的なところ〉を見つけた部分がある。相手の言葉にかぶさるように相槌を打って話していることだ。

 アメリカ人は相手の話が終わるまで、自分の言葉は発しない。英語文法では、最後まで聞いていないと意味が分からなくなるからだ。相槌も相手の言葉が終わるまで打たない。インタビュアーのロウさんも同じように言葉をかぶせて相槌を打って話しているが、彼もアメリカ人ではない。実は筆者も会話に夢中になると、相手の言葉にかぶさって喋ってしまうことが多い。

 もうひとつ意外に思ったのが、会話が盛り上がる中で突然、宇多田さんは言葉を忘れたかのように、日本語が口から飛び出したことだ。

ロウ:Just even when the lasers came out and created the fake floor in front of the stage and the way the lights splitted across the top. Beautiful.
(レーザーが放たれ、ステージ前に偽の床を作り出し、照明が天井を横切る様子さえも。美しい)

宇多田:Yeah. And and there was how do you say this in English? 演出Uh in like production no like overall general
(ええ。それと、あれを英語でどう言うんだっけ?演出……あの、制作みたいな、全体的な、一般的な)

「彼女が単に英語のdirection(演出)という単語を忘れたのか、それとも別の理由なのかはわからない。多言語話者が、あまり使わない単語を忘れるのはよくあることだよ。directionという言葉自体、この文脈では多くの意味や曖昧なニュアンスを持つから、単に適切な単語が思い付かなかっただけかもね」とランドさんは推測する。

「ロウさんにもニュージーランドなまりがある。強いなまりではないけれど、すぐわかる。ニュージーランドとオーストラリアのなまりはよく似ているね」とランドさん。

 今回はアメリカ英語を基準にアクセントやなまりについて考察してみたが、筆者が言いたかったのは、アメリカ英語が世界の中心ではないということだ。英語を話す人は世界に約15億人とも言われる。インドやシンガポールでは、独自に進化した英語もある。同じ英語でも、話す人のバックボーンによって違いがあることを、改めて発見できたインタビューだった。