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決して短くない時間を過ごす空の旅。富裕層であれば、当然「ファーストクラス」を選ぶだろう、と思われるかもしれません。
ところが、私がこれまでお仕えしてきた本物の富裕層の方々を思い返すと、彼らがあえてビジネスクラスを選ぶ場面に、私は何度も立ち会ってきました。その選択の背景には、資産額だけでは説明できない、一つの哲学が存在します。(日本バトラー&コンシェルジュ代表取締役社長 新井直之)
「成功の証明書」だった
ファーストクラスは
人の座席選びを観察していると、ファーストクラスには「移動の快適さ」とは別の、もう一つの機能があることに気づきます。それは、自分の地位や成功を、周囲にそれとなく示すということです。
経済学者ソースティン・ヴェブレンは、富を持つ人々が、その富を「目に見える形で消費する」傾向を「顕示的消費」と呼びました。高価なものの価値は、その実用性だけでなく、「それを持てる立場にある」と他者に伝わる点にもある――そうした考え方です。
ファーストクラスは、まさにこの顕示的消費の典型といえる存在でした。優先的な搭乗案内、最前方という座席の位置、まわりの乗客から向けられる視線……。その全てが、「私はここに座ることのできる人間である」という、一種の証明書として機能してきたのです。
そして、この証明書を強く必要とする時期は、誰にでもあります。
事業を一代で築き上げた方ほど、若い頃には確かにそれを求めていた、と振り返られることが少なくありません。まだ何者でもなかった自分が、ここまで確かにたどり着いたのだ――その実感を、目に見える形で確かめたい時期は、決して恥ずかしいものではないのです。
では、本物の富裕層が、あえてファーストクラスを選ばないことがあるのは、なぜなのでしょうか。







